2024年8月20日 更新

小説

千鳥と水琴窟

柳井 はづき  装画:倉秦

千鳥と水琴窟

「浦安(うらやす)さん」 さざ波のようだった無数の絃(げん)の音が、その一言で止んだ。 和室の天井に気まずい余…

小説

あなたの退職、代行します!

七沢 ゆきの  装画:もぽろ

あなたの退職、代行します! ~見習い退職代行の業務録~

「頼むよ!」 私の前で、顔だけはいいロクデナシが必死に手を合わせている。 彼は村雨むらさめ久利生くりゅう。私の…

小説

黒い跫音

推しと私の怪異調査 番外篇

鳥谷 綾斗  装画:中原 アヤ

黒い跫音

「ただいまっ!」 四月下旬、金曜日の夜。 私――椎しい葉ば里さと瑠るは、ファミレスのバイトを終えて早足で帰…

小説

瑞鳥は霹靂を呼ぶ

廃嫡皇子・珠怜永の中華宮廷推理録 番外編

希多 美咲  装画:藤 未都也

瑞鳥は霹靂を呼ぶ

 香こう綺き国こくの中央に位置する帝都『蓮れん陽よう』。皇帝が住まう龍りゅう栄えい城じょうの近くに門を構える湊…

小説

それから

軽井沢探偵譚 番外編

愁堂 れな  装画:Engawa

それから

‌‌ 忌き引びき開けに、隼(はや)人(と)は早速課長に退職したい旨(むね)を伝えたのだが、課長は一旦持ち帰ると…

小説

五道転輪王の素顔

冥府の花嫁 番外編

高山 ちあき  装画:縞

五道転輪王の素顔

「あー、今日の会食は空気が悪そうだから御給仕するのが億(おっ)劫(くう)だわ」 豪華な高級料理のならんだ御(お…

2024年8月9日 更新

小説

荒野は群青に染まりて 番外編

焼け跡のひなまつり

桑原 水菜  装画:Re°

焼け跡のひなまつり 後編

‌‌ こうなると、やはり赤(あか)城(ぎ)に相談するしかないのだ。‌ 廃材をのこぎりで切っていた赤城は、手を止…

小説

みつば百貨店おりおり便り

久賀 理世

みつば百貨店おりおり便り 第二回

「なに。わたしにとっておきの考えがあるのだよ」 ご機嫌にのたまった日ひ野の友ゆう之の助すけ会長は、おもむろに三…

2024年8月1日 更新

小説

荒野は群青に染まりて 番外編

焼け跡のひなまつり

桑原 水菜  装画:Re°

焼け跡のひなまつり 前編

‌  ことの起こりは、錦きん糸し町ちょうの闇やみ市いちでのことだった。‌ 阪さか上がみ群ぐん青じょうはこ…

小説

【特別試し読み】荒野は群青に染まりて ―暁闇編―

桑原 水菜  装画:Re°

【特別試し読み】荒野は群青に染まりて ―暁闇編―

序章  この景色を目に焼き付けておくのよ、群ぐん青じょう。‌ この世界に確かなものなど何もない。信じていいものと…

小説

あたしの友だちは訳ありバイト中

訳あってあやかし風水師の助手になりました 番外編

櫻井 千姫  装画:明菜

あたしの友だちは訳ありバイト中

‌‌ しとしと、今日も鬱(うっ)陶(とう)しい雨が世界を暗くしている。‌ あたしは雨の日が好きだ。普通の女の子…

小説

みつば百貨店おりおり便り

久賀 理世

みつば百貨店おりおり便り 第一回

 なにもこの世の終わりというわけではない。 そもそもが無謀な賭けだったのだ。「さてどうしたものかしら」 ひとり…

2024年7月18日 更新

小説

ふたりの、そのあと

今日伏見は水神さまのいたはるところ ずっと一緒 番外編

相川 真  装画:白谷 ゆう

ふたりの、そのあと

 京(きょう)都(と)伏(ふし)見(み)の酒蔵『清(きよ)花(はな)蔵(ぐら)』の跡取り、清(きよ)尾(お)拓…

2024年7月1日 更新

小説

雪と闇

長谷川 夕  装画:倉秦

雪と闇

一 ‌‌ 夜明けが近づいても、夜汽車が運行を再開する目処めどは立っていなかった。‌ 車しゃ掌しょうによれ…

2024年6月20日 更新

小説

六百年目の婚霊(?)写真

おやしろ温泉の神様小町 番外編

倉世 春  装画:漣 ミサ

六百年目の婚霊(?)写真

 開湯六百年、おやしろ温泉最古の旅館、三(み)澄(すみ)荘(そう)。 旅館の守り神『小(こ)町(まち)御(ご)…

2024年5月31日 更新

小説 201905月刊リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音

つきっきりの親切な人

リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 番外編

瑚池 ことり

つきっきりの親切な人

「あ、おはようニナ!」 リヒトは、ニナを見るなり笑った。 リーリエ国騎士団の宿舎である古城。 女性団員の部屋がある西塔…

2024年5月20日 更新

小説

屋根裏の番人

魔法使いのお留守番 番外編

白洲 梓  装画:kokuno

屋根裏の番人

 その日の終(はて)島(じま)は、朝から冷たい雨に包まれていた。 ヒマワリは薄墨色のどんよりした空を窓から見上…

2024年5月10日 更新

小説

宝石の歌

宝石商リチャード氏の謎鑑定 番外編

辻村 七子

宝石の歌

 オペラハウスにほど近いホテルに戻り、ベッドに身を投げると笑い声が聞こえた。「そんなに疲れた?」「そうでもない…

2024年4月18日 更新

小説

非日常な彼女

異界遺失物係と奇奇怪怪なヒトビト 2 番外編

梨沙  装画:ねぎし きょうこ

非日常な彼女

‌ アンティーク調の家具に愛らしいティーカップとそろいのソーサー。ガラスケースの中には、SNSにアップすればた…

小説

悦楽のソーセージまみれ弁当

弁当探偵 愛とマウンティングの玉子焼き 番外編

遊川 ユウ  装画:白山 たえ

悦楽のソーセージまみれ弁当

‌ ケチャップで炒めたソーセージを、おかずスペースいっぱいに詰め込んだお弁当。それは子どもにとっての憧れであり…

小説

清らで妙なる朝露のごとき

私のマリア 番外編

東雲 めめ子  装画:西條 ユリカ

清らで妙なる朝露のごとき

‌ 私の享(きょう)年(ねん)は十七だった。‌ 数え年ならば十九というべきだろうか。とにかく高三だったのだ。私…

小説

ミスター・ラスと金色の少年

レディ・ファントムと灰色の夢 番外編

栢山 シキ  装画:SNC

ミスター・ラスと金色の少年

‌ オルランド王国の首都・リーヴァイの中心からほど近い、それなりに裕福な中流階級が住んでいる地域に、そのテラス…

小説

思い出は優しい味

天狐のテンコと葵くん たぬきケーキを探しておるのじゃ 番外編

西 東子  装画:サコ

思い出は優しい味

‌ 全国的に晴れ渡った、秋のある日。‌ 東京近郊の山(やま)間(あい)の町・山(さん)王(のう)町(ちょう)は…

小説

第207回短編小説新人賞 入選

形代の恋

東雲 めめ子

形代の恋

第207回短編小説新人賞 入選

‌ 寝室のドアを開けたときの、あなたの表情が頭にこびりついている。あなたらしくもなく、息をきらせて恋人が眠る場…

2024年3月18日 更新

小説

大江戸恋情本繁昌記 ~O-EDO パンケーキ~

大江戸恋情本繁昌記 ~天の地本~ 番外編

ゆうき りん  装画:AiLeeN

大江戸恋情本繁盛記 ~O-EDO パンケーキ~

‌ 現代でも江(え)戸(ど)でも、編集者の仕事というのはそう変わらぬものだ、と小(こ)桜(ざくら)天(そら)(…

小説

“粋”と“夏流”のダブルキャスト

謎解きはダブルキャストで 番外編

ひずき 優  装画:三池 ろむこ

“粋”と“夏流”のダブルキャスト

‌‌「オレ、大学に行ってみたいんだけど」‌ そう切り出したのは、舞台「ルシア」稽(けい)古(こ)期間中のとある…

小説

彼女の家族

京都岡崎、月白さんとこ  茜さすきみと、「ただいま」の空 番外編

相川 真  装画:くじょう

彼女の家族

‌  ‌ 中学一年生の野の々の宮みや郁いく人とは、自分の前に立ちはだかる二人の男を見上げて、ごくりと…

2024年3月1日 更新

小説

きみが金魚を盗んでも

森ノ 薫  装画:ペキォ

きみが金魚を盗んでも

‌ 私にとって、小学校のころのゲンジは甘ったれで面倒くさい泣き虫だった。分かれ道の十字路にさしかかると、いつも…

2024年2月19日 更新

小説

煙突掃除令嬢は妖精さんの夢を見る 番外編

ジャン・コルビジエの祈り

倉世 春  装画:長門 さわこ

ジャン・コルビジエの祈り

「中尉どのには、決まった恋人はいないんですか?」‌ こんな状況で訊く質問だろうか。隣国エルガードとの国境近く。…

小説

決意の日

春華杏林医治伝 番外編

小田 菜摘  装画:ペキォ

決意の日

‌ 白(びゃく)蓮(れん)宮(きゅう)は皇城外にある、宗室の離宮である。‌ 深(しん)淵(えん)潭(たん)潭(…

2024年1月18日 更新

小説

玉塵

『後宮史華伝 すべて夢の如し』刊行記念 短編集既刊『白き断章 すべて雪の如し』収録短編 全文特別公開

‌‌ 雪色に染めあげられた石(いし)畳(だたみ)の道を華(か)輦(れん)(妃(ひ)嬪(ひん)専用の輿(こし))…

小説

八十年の約定

『後宮史華伝 すべて夢の如し』刊行記念 短編集既刊『紅き断章 すべて華の如し』収録短編 全文特別公開

‌‌ そこは牢獄にしてはあまりにも豪奢だった。‌‌「まるで皇后の住まいだな」‌ 瑠璃(るり)瓦(がわら)がふか…