もののけ寺の白菊丸
瀬川 貴次
もののけ寺の白菊丸 最終回
半分ほどに膨ふくらんだ月が、山の斜面に転々と建つ堂どう宇うの屋根を照らしている。 おかげで、案じていたよりも…
2023年9月29日 更新
瀬川 貴次
半分ほどに膨ふくらんだ月が、山の斜面に転々と建つ堂どう宇うの屋根を照らしている。 おかげで、案じていたよりも…
我鳥 彩子 装画:加藤 綾華
4 斯かくして僕は、翌日から毎日公園を散歩するように命じられた。 榊さかきさんと皐月さつきが代わ…
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
容疑 表に出ると、河(かわ)辺(べ)みずほは足に力が入らず、よろけて転びそうになった。「しっかりして!…
2023年9月19日 更新
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』番外編
辻村 七子 装画:雪広 うたこ
「潔(いさぎよ)く自ら王冠を脱ぎますか? それとも首だけになりますか?」「………………」 リチャードは数分、考…
白洲 梓 装画:蔀 シャロン
科(か)挙(きょ)受験者の資格に「性別を問わず」の文言が追加されたのは、聖(せい)太(たい)帝(てい…
阿部 暁子 装画:倉秦
二日後のことだ。 R大付属高校では夏休みに入ってからも各学年向けの夏期講習が行われる。参加するかは生徒の自由…
瀬川 貴次
「では、白しら菊ぎく丸まるはわたしたちが勿もっ径けい寺じに連れて参りますので、乳母めのとどのはここから都にお戻…
我鳥 彩子 装画:加藤 綾華
3 僕の住むマンションの近くには大きな公園があり、そこを散歩しながら小説の構想を練ねるのが僕の習…
珠華杏林医治伝 乙女の大志は未来を癒す 番外編
小田 菜摘 装画:ペキォ
中ちゅう原げんを支配する大帝国・莉り王朝。 今上の即位より六年目のその日、この国に女子のための医学校が開校し…
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
痕跡 「あれか……」 と、エリカは崖から下を覗のぞき込んで、「これじゃ、引き上げるのは容易じゃないわね」…
2023年9月8日 更新
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』番外編
辻村 七子 装画:雪広 うたこ
リチャードは何も言わず、静かに目礼した。俺もならう。 シャウルさんはややあってから、オーバーに腕を広げた。「…
阿部 暁子 装画:倉秦
今年度の東北高校弓道選手権大会の開催地は福島。R大付属高校弓道部からは、二年生男子重野、三年生女子及川おいか…
瀬川 貴次
泣いてはいけない。 数えの十二歳になって間もない白しら菊ぎくは、そう自分に言い聞かせつつ、寝殿造しんでんづく…
我鳥 彩子 装画:加藤 綾華
1 『書けない!?』 電話の向こうで、知らない宇宙人からお中元でも届いたかのような声が上がった。 …
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
消失点 「で、どうして私たちまで駆り出されるわけ?」 と、橋はし口ぐちみどりがふくれっつらで言った。「い…
2023年9月1日 更新
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』番外編
辻村 七子 装画:雪広 うたこ
シャウルさんはかつて医者であった。イギリスの医大を卒業し、スリランカに戻って開業もした、れっきとした専門医で…
阿部 暁子 装画:倉秦
忘れもしない五月三十日、教育実習が始まって二度目の月曜日だ。 明け方から、夏の匂いをおびてきた空気を撃ち…
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
消えた高校生 最終日だった。 朝、六時ごろに目が覚めると、谷(たに)崎(ざき)ゆかりは、早々に顔を洗っ…
2023年8月18日 更新
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』番外編
辻村 七子 装画:雪広 うたこ
ミュンヘン・ミネラルショーを訪れるのはこれで三度目だ。ミュンヘン国際空港からUバーンと呼ばれる地下鉄に乗り、…
『ハケン飯友 僕と猫の、小さな食卓』番外編
椹野 道流 装画:内田 美奈子
「はー、食った食った」 満足げにそう言って、猫……トラキチは、両手を元気よく合わせ、ごちそうさまの挨(あい)拶…
『映画みたいな、この恋を』ショートストーリー
いぬじゅん 装画:飴村
今日も翔(しょう)太(た)は元気だ。「実(み)緒(お)、見て。魚がいる!」 波打ち際で制服のパンツのすそが濡…
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
終わりの日 「やれやれだわ……」 と、マスクをした白髪の女性が言った。「こんな時間になって、やっとなんて…
2023年2月10日 更新
双蛇に嫁す 番外編
氏家仮名子 装画:田村由美
「また、双子の妃か」 長い黒髪を結い上げた男は、そう言って顔をしかめた。眉(み)間(けん)に寄った皺(し…
2022年12月6日 更新