2023年9月1日 更新

小説

たかが恋の話

阿部 暁子  装画:倉秦

たかが恋の話 第一回

 忘れもしない五月三十日、教育実習が始まって二度目の月曜日だ。 明け方から、夏の匂いをおびてきた空気を撃ち…

2023年8月18日 更新

小説

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』番外編

真砂なす

辻村 七子  装画:雪広 うたこ

真砂なす 第一回

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』番外編

 ミュンヘン・ミネラルショーを訪れるのはこれで三度目だ。ミュンヘン国際空港からUバーンと呼ばれる地下鉄に乗り、…

小説

『ハケン飯友 僕と猫の、小さな食卓』番外編

ずっと一緒に

椹野 道流  装画:内田 美奈子

ずっと一緒に

『ハケン飯友 僕と猫の、小さな食卓』番外編

「はー、食った食った」 満足げにそう言って、猫……トラキチは、両手を元気よく合わせ、ごちそうさまの挨(あい)拶…

小説

『映画みたいな、この恋を』ショートストーリー

「ぜんぶ、夏のせい」

いぬじゅん  装画:飴村

「ぜんぶ、夏のせい」

『映画みたいな、この恋を』ショートストーリー

 今日も翔(しょう)太(た)は元気だ。「実(み)緒(お)、見て。魚がいる!」 波打ち際で制服のパンツのすそが濡…

2023年5月26日 更新

小説

パフェとガチ恋

泉 サリ

パフェとガチ恋

「浜(はま)松(まつ)くーん」「はい?」「明日、イッキューさん来るから。よろしくね」 締めの作業中に店長にそう…

2023年5月19日 更新

小説

小野寺我聞のすべらない話

一八三 手錠の捜査官 番外編

泉 サリ  装画:モクモクれん

小野寺我聞のすべらない話

 小(お)野(の)寺(でら)我(が)聞(もん)は、池(いけ)袋(ぶくろ)警察署に所属する齢(よわい)三十の刑事…

2023年2月24日 更新

小説

私を見下さないで

泉 サリ

私を見下さないで

 製菓工場の短期バイトはほんとにきつくて、三日目にして行くのが嫌になった。日曜だけ休みの週六日、八時から十七時…

小説

僕の目を見て

泉 サリ

僕の目を見て

 他の教科では一位しかとったことがないけれど、古典だけは本当に苦手。何が書いてあるのかさっぱりわからないし、同…

2023年2月10日 更新

小説

払暁前夜――嚆矢、北方より

双蛇に嫁す 番外編

氏家 仮名子  装画:田村 由美

払暁前夜――嚆矢、北方より

‌‌「また、双子の妃か」‌ 長い黒髪を結い上げた男は、そう言って顔をしかめた。眉(み)間(けん)に寄った皺(し…

2022年12月6日 更新

小説

意識高い系第二新卒の憂鬱

このビル、空きはありません! オフィス仲介戦線、異常あり 番外編

森ノ 薫  装画:ゆき哉

意識高い系第二新卒の憂鬱

 会議室で六名の男女が話し込んでいる。 ガラス張りのパーテーション越しに、議論が白熱しているさまが見える。社員…

2021年11月19日 更新

小説

【2021年ノベル大賞 大賞受賞第一作】

ちと活発チャプター

泉 サリ

ちと活発チャプター

〈一月十日〉 休み時間、御手洗(みたらい)くんがおもむろにハーモニカを吹き始めたらあたしは即興で踊らなきゃなら…