第238回短編小説新人賞
【最終選考作品】紫色の向こう側へ(著:片山史奈)
初恋の人のスーツ姿は眩(まぶ)しかった。何度も夢に見たあのしーくんの姿が、そこにある。黒いスーツに合わせられた藤(ふ…
2026年8月10日 更新
初恋の人のスーツ姿は眩(まぶ)しかった。何度も夢に見たあのしーくんの姿が、そこにある。黒いスーツに合わせられた藤(ふ…
堀(ほり)内(うち)くんは嘘がつけない。 天(てん)真(しん)爛(らん)漫(まん)とか、歯に衣(きぬ)着(き)せぬと…
「みなさん、こんにちは。放課後ラジオのお時間でーす。パーソナリティはひ(﹅)な(﹅)と……」「こんにちは。り(﹅)の(…
「わたしゃ高い所は嫌いだよ」 ゴンドラの扉が閉められた途端、祖母はそんなことを言った。 今まさに孫と観覧車に乗り込んだ…
「卵、要(い)りますか?」 今日が最終出勤日の、つまりは今日を最後に二度と会わない人であるところの萩(はぎ)原…
「三日後は雨だよ」 店長が言った。 別にどうでもいい情報だった。三日後の天気なんて気象庁のサイトを見れば載(の…
編集E 「どんなときも嘘をつかない」という、堀内君というキャラクターが面白かったです。 編集A それに主人公も、…
編集D 主人公の女子大生が失恋するお話です。明確にフられるというわけではないのですが、成人式の日に、主人公は長い…
編集A 職場の女性同士の絶妙な関係性を描いている作品で、すごくいいなと思いました。友情とまでも言えないけれど、確…
編集A 不思議な魅力のある作品ですね。 編集B 私は、このおばあちゃんのキャラがすごく好きです。ピシッと背筋の伸…
編集A なんとも微妙な超常能力を持ったコンビニ店長と、そのコンビニでアルバイトをしている大学生の「俺」との物語で…
編集A 短編には珍しい、オムニバスっぽい作りの作品です。 青木 4パターンのエピソードが並んでいますよね。「放課…
2026年5月8日 更新
「死ねばいいのにね」 耳のすぐそばで声を聞いた時、私は初め自分の心が漏(も)れて、音になったのかと思った。だってそれは…
小晦日。こつごもり。十二月三十日。大(おお)晦日(みそか)の前日。 私はその言葉を常連客のハビさんに教えてもらった。…
夕焼けチャイムに起こされて今日も絶望する。俺はあの音が今、なによりも憎い。正しい人間であれば朝からの活動が終了し、よ…
アデリーペンギンの雄(おす)は気に入った雌(めす)に小石を差し出す。あなたと一緒に巣を作りたい、繁(はん)殖(しょく…
そびえ立つ一本の長い煙突は、建物の比率と比べるとはるかに細長く、今まで見たどんなものよりも、高く遠く異質なも…
ミーティングルームはやたらと空調が効いていて、今朝、迷いに迷ってヒートテックに貼ったカイロは完全に蛇(だ)足…
編集C 母子家庭で、貧しい暮らしをしている女子中学生のお話です。住んでいるのはボロアパート。母親はスナック勤めをし…
編集A 人の死、それも自分と同じくらいの歳の子供の死というものに初めて触れた、小学生の女の子のお話です。まだ9歳ぐ…
編集A 主人公は、大学に助教として勤めているアラサー女性です。自分が学生として過ごした大学に就職し、当時から師事し…
編集E すごく雰囲気のいい作品でしたね。 編集A 作中に漂っている空気が、なんだかおしゃれなんですよね。 青木…
編集A 主人公は、とある会社で営業事務の仕事をしている女性です。定時を過ぎた後で、営業担当の南君と一緒に資料を作る…
編集B 就活に失敗して引きこもっている青年と、そんな弟に元気を出させようとやって来たお姉さん。でも実は、そんなお姉…
2026年2月10日 更新
午前十一時二十五分。大さじ三の水。大さじ二のしょうゆ。大さじ一の酒。大さじ一の砂糖。大さじ一のオイスターソース。小さ…
「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ」 浮ついた身体(からだ)でバランスを崩さないように、足を上げる。真下は水面。地味に遠…
そうだ、終点まで行ってみよう。 ある日突然思いついたその案を実行すべく、俺は早朝、品(しな)川(がわ)駅に立っていた…
「おい、フモンカン、取り壊されるって」 遅番の小(お)川(がわ)が最悪のニュースを連れて出勤した。「やばいじゃん」「や…
「まいったなあ……」「まいりましたね……」 二人がそんなやり取りをした回数も、そろそろ二桁(けた)に突入しかけ…
月曜日。朝目を覚ますと、そこは助手席だった。知らない車だ。運転席には市役所総務課の同僚、原(はら)田(だ)さ…
編集A 深夜の山中で、友人を殺した犯人と閉鎖環境で二人きりになってしまうという、かなり究極のシチュエーションで進行…
編集C これは、いわゆる「不条理もの」ですね。ストーリーの整合性に関する議論とは無縁です。「なんでそうなるの?」と…