第237回短編小説新人賞
【最終選考作品】松風荘の暗がりで(著:御子柴あやな)
「死ねばいいのにね」 耳のすぐそばで声を聞いた時、私は初め自分の心が漏(も)れて、音になったのかと思った。だってそれは…
2026年5月8日 更新
「死ねばいいのにね」 耳のすぐそばで声を聞いた時、私は初め自分の心が漏(も)れて、音になったのかと思った。だってそれは…
小晦日。こつごもり。十二月三十日。大(おお)晦日(みそか)の前日。 私はその言葉を常連客のハビさんに教えてもらった。…
夕焼けチャイムに起こされて今日も絶望する。俺はあの音が今、なによりも憎い。正しい人間であれば朝からの活動が終了し、よ…
アデリーペンギンの雄(おす)は気に入った雌(めす)に小石を差し出す。あなたと一緒に巣を作りたい、繁(はん)殖(しょく…
そびえ立つ一本の長い煙突は、建物の比率と比べるとはるかに細長く、今まで見たどんなものよりも、高く遠く異質なも…
ミーティングルームはやたらと空調が効いていて、今朝、迷いに迷ってヒートテックに貼ったカイロは完全に蛇(だ)足…
編集C 母子家庭で、貧しい暮らしをしている女子中学生のお話です。住んでいるのはボロアパート。母親はスナック勤めをし…
編集A 人の死、それも自分と同じくらいの歳の子供の死というものに初めて触れた、小学生の女の子のお話です。まだ9歳ぐ…
編集A 主人公は、大学に助教として勤めているアラサー女性です。自分が学生として過ごした大学に就職し、当時から師事し…
編集E すごく雰囲気のいい作品でしたね。 編集A 作中に漂っている空気が、なんだかおしゃれなんですよね。 青木…
編集A 主人公は、とある会社で営業事務の仕事をしている女性です。定時を過ぎた後で、営業担当の南君と一緒に資料を作る…
編集B 就活に失敗して引きこもっている青年と、そんな弟に元気を出させようとやって来たお姉さん。でも実は、そんなお姉…
2026年2月10日 更新
午前十一時二十五分。大さじ三の水。大さじ二のしょうゆ。大さじ一の酒。大さじ一の砂糖。大さじ一のオイスターソース。小さ…
「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ」 浮ついた身体(からだ)でバランスを崩さないように、足を上げる。真下は水面。地味に遠…
そうだ、終点まで行ってみよう。 ある日突然思いついたその案を実行すべく、俺は早朝、品(しな)川(がわ)駅に立っていた…
「おい、フモンカン、取り壊されるって」 遅番の小(お)川(がわ)が最悪のニュースを連れて出勤した。「やばいじゃん」「や…
「まいったなあ……」「まいりましたね……」 二人がそんなやり取りをした回数も、そろそろ二桁(けた)に突入しかけ…
月曜日。朝目を覚ますと、そこは助手席だった。知らない車だ。運転席には市役所総務課の同僚、原(はら)田(だ)さ…
編集A 深夜の山中で、友人を殺した犯人と閉鎖環境で二人きりになってしまうという、かなり究極のシチュエーションで進行…
編集C これは、いわゆる「不条理もの」ですね。ストーリーの整合性に関する議論とは無縁です。「なんでそうなるの?」と…
編集B 主人公は、順風満帆な人生を歩んでいる都会の青年です。仕事にもプライベートにも、何の不足も問題もない。でも、…
編集B 水泳部に所属している高校3年生の「僕」のお話です。昼休みも放課後も真っすぐにプールへと向かい、水泳に打ち込…
編集A タイトル通り、まさに「山本君が誘拐されるお話」です。しかも、宇宙人に誘拐される(笑)。 編集E 荒唐無稽な…
編集B 年に一度の団体客を受け入れることでかろうじて生き延びていた、万年経営難の貧相なホテルが、その収入源すら失う…
2026年1月19日 更新
2025年11月10日 更新
ゴウンゴウンと機械の稼働音が工場中に響き渡る。 ライン内では青い液体がタンクに満たされ、同僚の作業員が重そうにそのタ…
自動音声が『七十三階に到着しました』と淡々と告げ、エレベーターの銀の扉が涼やかな音を立てて開いた。りん。 降りたフロ…
神奈川県田綱郷亜(あ)土(ど)村の村民は、未知の味覚『ゆがい』を持っている。 その事実が急激に広まったのは、友人に料…
午前六時四十七分。アキラの体内センサーが最適な起床時刻を告げると同時に、部屋の照明が徐々に明るくなる。壁面のスクリー…
検査結果を聞いてスズキは肩を落とした。まだこの星に来て三年もたたないのにあの病気に感染してしまったのだ。それは一種の…
あれはまだ日本が平和だった頃、いや、既に精神面では暴発の一歩手前まで進んでいた頃の話だ。 大学一年生の夏。僕達クイズ…
目が覚めると小方ルミナと目が合った。一気に目が覚めた。「おはようございます」 と俺は朝の挨拶をする。 俺の部…