2025年4月1日 更新

小説

牝狼の戴冠

双蛇の落胤 番外編

氏家 仮名子  装画:田村 由美

牝狼の戴冠

 その日、アルタナで三十頭の羊が屠(ほふ)られた。 三十頭、すべて族長シリンの羊である。 客人の唐突な来訪に、…

小説

オレンジ文庫創刊10周年記念「魔法のある日常」リレー短編

似鳥 鶏 / 乙一 / 桑原 水菜  装画:Shiho

オフロサマ(著:桑原水菜)

 多くの人間は知らないだろうが、風呂には神がいる。 どの風呂にも神はいる。温泉にはもちろん、昔ながらの五右衛門…

2025年3月18日 更新

小説

玦(おびだま)の追憶

後宮の迷い姫 消えた寵姫と謎の幽鬼 番外編

彩本 和希  装画:夏目 レモン

玦(おびだま)の追憶

「名君が時に暗君に転じるのはなぜだと思う?」 炫耀(げんよう)がそう尋ねたのは二人揃って課業を脱け出し、祠…

小説

四堂蓮人のお弁当事情

恋せぬマリアは18で死ぬ 番外編

山本 瑤  装画:YORIKO

四堂蓮人のお弁当事情

 俺の朝は、弁当用の卵焼きを焼くことから始まる。卵2個を割ってかきまぜ、砂糖と市販の麺つゆを少し。いわゆるだし…

小説

ニコラシカは今この瞬間

シュガーレス・キッチン ーみなと荘101号室の食卓ー 番外編

樹 れん  装画:わみず

ニコラシカはこの瞬間

 脳天に雷が落ちるような、衝撃的な一目惚(ぼ)れでなかったことは確かだ。例えるなら、ボールが階段を転がり落ちて…

小説

エドマンド・フリートウッド、吝嗇家疑惑事件

代筆屋アビゲイル・オルコットの事件記録 ホワイトチャペル連続殺人 番外編

仲村 つばき  装画:藤ヶ咲

エドマンド・フリートウッド、吝嗇家疑惑事件

「お兄さまって、吝(りん)嗇(しょく)家(か)なの?」 クラリッサにそうたずねられて、エドマンドはサーモンにさ…

小説

とある男の甘味手帖

若旦那さんの「をかし」な甘味手帖 2 北鎌倉ことりや茶話 番外編

小湊 悠貴  装画:moko

とある男の甘味手帖

 そのホテルは、異国情緒がただよう横浜山手の一角に建っていた。「ここがホテル猫(ねこ)番(ばん)館(かん)か……

2025年2月28日 更新

小説

仕立て屋のひとりごと

魔法使いのお留守番 ヒムカ国編 番外編

白洲 梓  装画:kokuno

仕立て屋のひとりごと

 カランカラン、と店の入り口のドアが鐘を鳴らした。「いらっしゃいませ」 父が穏やかな声で客を出迎える声がする。…

小説

オレンジ文庫創刊10周年記念「魔法のある日常」リレー短編

似鳥 鶏 / 乙一 / 桑原 水菜  装画:Shiho

子羊たちの冒険(著:乙一)

   1 何年か前に亡くなった祖母は、ヨーロッパから日本に移住してきた女性で、もしかしたら魔女の血を引いていた…

2025年2月19日 更新

小説

幸せのオシソワケ!

ワケあっておチビと暮らしてます 番外編

鈴森 丹子  装画:雨宮 うり

幸せのオシソワケ!

 小さな靴箱が備え付けられた、コンパクトな玄関。 短い廊下の右手にはトイレ、左手には洗面台と浴室。 奥へ進むと…

小説

妖精国から魔法少女へ

わたしが魔法少女になっても 番外編

氏家 仮名子  装画:甘春 わすれ

妖精国より魔法少女へ

 ミラは執務机に向かい、鏡に映し出された顔を凝(ぎょう)視(し)していた。 これが、探し求めていた子。 ようや…

小説

記事の中の人

バケコミ! 婦人記者・独楽子の帝都事件簿 番外編

ひずき 優  装画:U35

記事の中の人

 乙(おと)羽(わ)独(こ)楽(ま)子(こ)は、念願かなって何とか記者としての職を得た。 東(とう)京(きょう…

小説

アオの推し活

魔法使いのお留守番 ヒムカ国編 番外編

白洲 梓  装画:kokuno

アオの推し活

 アオはうきうきとした気分で、その大きな本屋を見上げた。 歴史を感じる赤(あか)煉(れん)瓦(が)造りの三…

2025年1月31日 更新

小説

オレンジ文庫創刊10周年記念「魔法のある日常」リレー短編

似鳥 鶏 / 乙一 / 桑原 水菜  装画:Shiho

黙って最後に回る人(著:似鳥 鶏)

オレンジ文庫創刊10周年記念「魔法のある日常」リレー短編 第1弾

   1  最寄り駅の改札を出るあたりで何か胸騒ぎを覚えたので、今日は本屋に寄らず、まっすぐ帰ること…

小説

吸血鬼と真夜中の散歩者

赤川 次郎  装画:ひだか なみ

吸血鬼と真夜中の散歩者 最終回

明日へ 「どうしたの、エリカ?」 と、居間へ入って来て、五月さつきが訊いた。「突然ごめんね」 と、エリカ…

2025年1月24日 更新

小説

【続編始動記念リバイバル連載】

魔法使いのお留守番

白洲 梓  装画:kokuno

魔法使いのお留守番 第一話

魔法使いシロガネ ‌ その島に住む魔法使いは、不老不死の秘術を得たという。‌ 大陸の最果て、南に広がる蒼…

2025年1月20日 更新

小説

異人館画廊

エメラルドの瞳

谷 瑞恵  装画:詩縞 つぐこ

エメラルドの瞳

 ロンドンは雨が降っている。カレッジの図書館で、文献を読みあさる日々が続き、千(ち)景(かげ)は頭の中がどっぷ…

小説

君の瞳に私は映らない

君の瞳に私が映らなくても 番外編

櫻井 千姫  装画:ふすい

君の瞳に私は映らない

 いつもより三十分早くスマホのアラームをセットして、顔を洗って机に向かう。 佳(か)子(こ)が「これ、めっちゃ…

小説

女役人が山査子飴の秘密を守ること

春燕さん、事件です! 女役人の皇都怪異帖 番外編

真堂 樹  装画:シライシユウコ

女役人が山査子飴の秘密を守ること

 大(だい)永(えい)国(こく)の京師(みやこ)、承(しょう)京(けい)。 街は新年を迎えて華やかに賑わってい…

小説

吸血鬼と真夜中の散歩者

赤川 次郎  装画:ひだか なみ

吸血鬼と真夜中の散歩者 第五回

契約 〈また心臓を奪われる!〉〈三度めの犯行! 一千万円の支払いは〉 新聞の見出しを眺めて、クロロックは…

2025年1月10日 更新

小説

吸血鬼と真夜中の散歩者

赤川 次郎  装画:ひだか なみ

吸血鬼と真夜中の散歩者 第四回

再会と再会  五月さつきは迷っていた。 神かみ代しろエリカから渡された、ケータイ番号のメモをじっと眺めて…

2024年12月27日 更新

小説

吸血鬼と真夜中の散歩者

赤川 次郎  装画:ひだか なみ

吸血鬼と真夜中の散歩者 第三回

生死 「凄(すご)い」 と、素直に感想を述べたのはみどりだった。 もちろん、エリカも「大した屋敷だわ」と…

2024年12月19日 更新

小説

ランダムグッズまじ勘弁

おたくの原稿どうですか? 池袋のでこぼこシェアハウス 番外編

泉 サリ  装画:島 順太

ランダムグッズまじ勘弁

 ランダムグッズの袋の中には神様がいて「○番がほしい」とか「被らないでくれ」みたいなこちらの思考をことごとく見…

小説

皇后は風を吹かせる

草原の花嫁 番外編

日高 砂羽  装画:憂

皇后は風を吹かせる

 南(なん)麗(れい)国の偽公主である翠(すい)鳳(ほう)が北(ほく)宣(せん)に輿(こし)入(い)れしたのは…

小説

思い出は美しすぎて

相棒は犬 2 転生探偵マカロンの事件簿 番外編

愁堂 れな  装画:奈良 千春

思い出は美しすぎて

「あ」 叔父から久々に来たメールで、事務所のデスクの引き出しに入っている書類をスキャンして送ってほしいと頼まれ…

小説

あなたが幸せでありますように

十番様の縁結び 7 神在花嫁綺譚 番外編

東堂 燦  装画:白谷 ゆう

あなたが幸せでありますように

 新年を迎えたばかりの夜のこと。 真(ま)緒(お)と終(しゅう)也(や)は、花(はな)絲(いと)にある神社に足…

小説

吸血鬼と真夜中の散歩者

赤川 次郎  装画:ひだか なみ

吸血鬼と真夜中の散歩者 第二回

失踪 「今どき、そんなことがあるのか」 と、フォン・クロロックが朝食をとりながら言った。「ねえ、借金…

2024年12月10日 更新

小説

吸血鬼と真夜中の散歩者

赤川 次郎  装画:ひだか なみ

吸血鬼と真夜中の散歩者 第一回

署名 「いいんだね」 と、その男は念を押すように言った。 五月さつきは、少しためらったものの、どうするこ…

2024年11月19日 更新

小説

朱色の幻影

あやかし乙女のご縁組 ~神託から始まる契約結婚~ 番外編

七沢 ゆきの  装画:榊 空也

朱色の幻影

 美貌の男が土間に立っている。その場に二つ並んだかまどは、そこが現代の少し前の台所なのを示していた。 男の目の…

小説

しのぶれば

あやかし姫のかしまし入内(エンゲージ) 番外編

後白河 安寿  装画:後藤 星

しのぶれば

 北山の端はが茜と金に色づき始めた。日中の仕事を終えた人間たちは、黄土色の乾いた大地に紺青色の影を残して帰路を…

小説

もののけ寺に朝が来て

もののけ寺の白菊丸 桜花の稚児舞 番外編

瀬川 貴次  装画:大西 実生子

もののけ寺に朝が来て

 東の空が微(かす)かに白み始め、今日も勿(もっ)径(けい)寺(じ)に朝がやってきた。 数えで十二歳の小坊主、…

2024年11月1日 更新

小説

荒野は群青に染まりて 番外編

マムシとりんご

桑原 水菜  装画:Re°

マムシとりんご 後編

 タケオが闇市やみいちで敦子を見かけたのは、その数日後のことだった。 竹かご屋の店先に、ひとりで座っていた。 …