第236回 短編小説新人賞
【最終選考作品】何も持たずに行こう(著:谷地雪)
そうだ、終点まで行ってみよう。 ある日突然思いついたその案を実行すべく、俺は早朝、品(しな)川(がわ)駅に立っていた…
2026年2月10日 更新
そうだ、終点まで行ってみよう。 ある日突然思いついたその案を実行すべく、俺は早朝、品(しな)川(がわ)駅に立っていた…
「おい、フモンカン、取り壊されるって」 遅番の小(お)川(がわ)が最悪のニュースを連れて出勤した。「やばいじゃん」「や…
「まいったなあ……」「まいりましたね……」 二人がそんなやり取りをした回数も、そろそろ二桁(けた)に突入しかけ…
月曜日。朝目を覚ますと、そこは助手席だった。知らない車だ。運転席には市役所総務課の同僚、原(はら)田(だ)さ…
2026年1月19日 更新
そこにいたのは、十年前、俺が全てを奪った人だった。
小菅 あすか 装画:ハルカゼ
2024年の本屋大賞受賞者、宮島未奈さんと、2025年の同賞受賞者、阿部暁子さん。実はお二人には、デビュー前に…
魔王のかまど 番外編
瑚池 ことり 装画:庭 春樹
「――うむ、風除けを張って炉に薪(たきぎ)を足した。娘の寝袋も広げたし、これでいいな」 ハルは指さし確認した。…
王稜五閣の花姫御殿 番外編
梨沙 装画:春が野 かおる
「今日は見事な晴天ですなあ」 荷物を背負い直した旅人が畑仕事に精を出す女に声をかける。女は顔を上げ、腰を叩きな…
十番様の縁結び 9 神在花嫁綺譚 番外編
東堂 燦 装画:白谷 ゆう
その宝石を見たとき、一番に浮かんだのは妻のまなざしだった。 鮮やかに咲き誇る、椿(つばき)の赤。 この石があ…
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
心の迷子 「おじさん」 その声に、中(なか)野(の)はハッとした。 朝、駅へ向かうバスの中だ。昔ほどでは…
2026年1月9日 更新
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
発見 鳥の鳴く声で目が覚める。 これこそ、理想の暮らしだ! 六十才の定年を過ぎても、さらに十年以上働き…
2025年12月26日 更新
このレポートは、2025年11月21日(金)にジュンク堂書店池袋本店で開催された『銀の海 金の大地』復刊完結記念イベン…
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
トラブル その後は――当然、なるべくしてなったのである。 夜十二時に、クロロック家のチャイムが鳴り、「…
奥乃 桜子
東(とう)京(きょう)駅(えき)のすぐそば、再開発の進む八(や)重(え)洲(す)の一等地を見下ろす高層フロアにて、御…
奥乃 桜子
ますます小(こ)夏(なつ)はうろたえた。さすがに話が違うではないか。「……これってネコダマ案件ではないですよね。わた…
奥乃 桜子
「やっちゃえよ」 芽め吹ぶき朋とも也やがはじめてその声を聞いたのは、職場の最寄り駅だった。終電間際に若い男とすれ違…
奥乃 桜子
黄(よ)泉(み)鳥(どり)はどのデスクにも近寄らず、漫画本を携(たずさ)えたまま突きあたりへ歩を進めた。「……エース…
2025年12月18日 更新
後宮真誌怪 あやかし好事家の空白異変 番外編
希多 美咲 装画:花守
紅(こう)紗(さ)族を代表して和(わ)南(なみ)島から帝都『蓮(れん)陽(よう)』に渡って早半年。香(こう)…
相棒は犬 3 転生探偵マカロンの事件簿 番外編
愁堂 れな 装画:奈良 千春
運命の出会い。組長と盃(さかずき)を交わした以外にそんな出会いが自分に訪れることなどあるまいと、二年前のあの…
争族なんて聞いてない! 新米税理士、初仕事は女たちの戦場で 番外編
ひずき 優 装画:加藤木 麻莉
藤(ふじ)村(むら)税理士事務所は、銀(ぎん)座(ざ)の路地裏にある雑居ビルの二階に看板を出している。 ドア…
京都岡崎、月白さんとこ 秋染まる嵐と静かの月 番外編
相川 真 装画:くじょう
リビングの時計は、先ほどから遅々として進まない。 ため息交じりに立ち上がった青(せい)藍(らん)は、空(から…
掌侍・大江荇子の宮中事件簿 八 番外編
小田 菜摘 装画:ペキォ
かぐわしい梅の香りが漂う庭に、鶯(うぐいす)の鳴き声が響いた。 荇(こう)子(こ)は雑巾を握る手を止め、簀子…
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
空中の出来事 「にぎやかでよろしい」 と、フォン・クロロックは言った。「ワア」 と、虎(とら)ちゃん、こ…
2025年12月10日 更新
赤川 次郎 装画:ひだか なみ
消える 「人間が一人、消えて失くなるなんてこと、あると思う?」 いきなりそう訊かれて、どう答えればいいの…
2025年11月19日 更新
ハルシネーションの庭 番外編
村崎 なつ生 装画:紀伊 カンナ
髪ってここまで傷(いた)むものなんだなあ、と牡(ぼ)丹(たん)の頭部を濡らしながら七(なな)緒(お)は考える…
ワケあっておチビと暮らしてます 夏休み 番外編
鈴森 丹子 装画:雨宮 うり
小さな靴箱が備え付けられた、コンパクトな玄関。 短い廊下の右手にはトイレ、左手には洗面台と浴室。 奥へ進むと…
2025年11月14日 更新
2025年11月10日 更新
ゴウンゴウンと機械の稼働音が工場中に響き渡る。 ライン内では青い液体がタンクに満たされ、同僚の作業員が重そうにそのタ…
自動音声が『七十三階に到着しました』と淡々と告げ、エレベーターの銀の扉が涼やかな音を立てて開いた。りん。 降りたフロ…
神奈川県田綱郷亜(あ)土(ど)村の村民は、未知の味覚『ゆがい』を持っている。 その事実が急激に広まったのは、友人に料…
午前六時四十七分。アキラの体内センサーが最適な起床時刻を告げると同時に、部屋の照明が徐々に明るくなる。壁面のスクリー…
検査結果を聞いてスズキは肩を落とした。まだこの星に来て三年もたたないのにあの病気に感染してしまったのだ。それは一種の…