第4回

「今回は古代転生ファンタジーです」

本を手渡されるときに添えられた一言に、はてなマークが三つほど浮かんだ。古代の話? 転生するの? そこにファンタジーまでくっついてますけど?

しかし、そのはてなマークは「真オレンジ色」をしていて、自分がすでにウキウキしていることを感覚でつたえていた。

そういった本に対する第六感は、往々にして正しい。

物語は、西暦三五〇年をイメージした古代、淡海(おうみ)の国(現代の滋賀県のあたり)を舞台に進んでいく。

主人公である十四歳の少女・真秀(まほ)は、複雑な生い立ちによるいじめ、病に臥(ふ)せた母、目と耳と口が不自由な兄を抱えながらも強く生きている。そんな真秀が、自分の出生の秘密に近づきながら、時代の争乱に巻き込まれていく!

……らしい。

恥ずかしながら、今回初めてこの物語に触れ、一巻だけを読み終えたばかりの私は、まだその全貌に辿り着けず、ストーリーの要約がままならない状況にある。

しかし、それでも私の脳みそが、徒競走の後のようにドクドクと脈を打っているのを感じる。ほら見たことか、本への第六感! 面白い面白い面白い……! ドーパミンが出まくっている。

私はこの物語に出会ったばかりで、真秀の戦いを見守る日々も始まったばかりであることも、とても幸せなことだ。すでにこのシリーズを完走している人から、羨ましいという声が聞こえてきそうなものだ。

そう、今作は伝説の名作と呼ばれ、コバルト文庫(オレンジ文庫の先駆けとなるレーベル)で発売されていたシリーズの復刻版である。なんと全十一巻……!

古事記を研究しつくし、想像力で昇華させた氷室冴子さんによる、壮大なスケールの物語。氷室さんの古事記への強い敬意がストーリーをより骨太にしており、そこで瑞々しく駆け回るキャラクターの対比が美しい。

ちなみに、冒頭で書いた三つのはてなマーク。

「古代」は物語の時代設定が解決するので、解決。「ファンタジー」も古事記から世界を広げているという私なりの解釈で、解決。

では「転生」は? 第一巻では、転生にまつわる直接的な答えはない。しかし、これが「転生」になるのでは? という言葉がちらほら見受けられ、伏線大好き人間である私は、またドクドクする。ドーパミン。

全十一巻、ノンストップで駆け抜けたい。

五日ほど休みがもらえないか、事務所に相談である。

銀の海 金の大地 1
氷室 冴子銀の海 金の大地 1
発売中・集英社オレンジ文庫
定価770円(税込)

おおとも・かれん●1999年10月9日生まれ、群馬県出身。雑誌「Seventeen」で専属モデルを務め、現在は「MORE」専属モデルとして活動中。「今日、好きになりました。」(ABEMA)ではレギュラー見届け人を務める。近年はドラマ「正しい恋の始めかた」(EX系/2023年)で主演を務め、ドラマ「フィクサーSeason3」(WOWOW/2023年)、「トークサバイバー2」(Netflix/2023年)、「厨房のありす」(NTV系/2024年)などに出演。

大友 花恋