- テーマは「茶」。
都のはずれの小廟で女道士として暮らす孫月娥は、かつて暴漢から救ってくれた整斗王・高秋霆に密かに恋をしていた。女道士として仕事に追われつつ、茶を喫し茶菓を楽しむ。そんな月娥の慎ましい生活はある日一変する。突然くだされた勅命により、月娥は還俗し宗室に嫁ぐことに。しかもその相手は、月娥が焦がれてやまぬ秋霆その人であった。栄華を極める大凱帝国に、王朝転覆をもくろむ邪教の魔の手が迫るなか、胸を轟かせて想い人に嫁ぐ月娥の運命は――?
- もともとは捨て子で、茶商の養女として育てられた。ある事情から出家し、女道士として暮らしていたが、勅命により整斗王府に嫁ぎ、王妃になる。夫となった秋霆は初恋の相手。その育ちから、茶と茶菓にたいへん造詣が深い。
- 宣祐帝の皇二子で嘉明帝・高礼駿の兄。整斗王に封じられているが、母が大罪を犯した廃妃であるため実権を持たない。深く愛していた王妃・馮氏を五年前に亡くしている。勅命で月娥を後妻に迎えるが、婚姻を受け容れられずいずれ離縁したいと考えている。
- 亡き素蘭が産んだ秋霆の息子。五歳にして経書を暗唱する聡明さをもつが、父に嫁いできた月娥を妖鬼だと思い込んで目の敵にする。
- 秋霆の亡妻。生前は秋霆と相思相愛の仲だった。
- 宣祐帝と尹太后の間に生まれた皇長子で秋霆の異母兄。優れた人品を持ち皇太子の有力候補だったが、少年時代に負った怪我のため皇位につかなかった。現在は松月王。
- 宣祐帝の皇三子で秋霆の異母弟。恵兆王に封じられている。母は宣祐帝の寵妃・李皇貴太妃(李紫蓮)。花街に入り浸りの度しがたい遊び人。
- 宣祐帝の皇九子で秋霆の異母弟。穣土王に封じられていた。王妃とともに秋霆夫妻と親しく交流していたが、五年前に病死している。
- 佩良の正妃。夫亡き後は穣土王太妃と呼ばれている。貞淑で心やさしく、後宮の事情に疎い月娥を気遣う。
- 賞月の変で宣祐帝を守って命を落とした易太監の養女。父の死後、公主の位を授けられた。現在は永恩長公主。勝気な少女で、秋霆を慕っている。
- 賞月の変の首謀者・高月娘の娘。母が大罪を犯し獄死したことで父との関係に亀裂が入り出家。今は玉梅観の女道士として静かに暮らしている。
- 整斗王妃付き首席女官。婀娜っぽい美女で、整斗王妃付き首席宦官・魚奇幽の妻。月娥に忠実に仕える。
- 整斗王妃付き首席宦官で、巧燕の夫。大変な愛妻家で、宦官として順調に出世街道を歩んでいたが、巧燕と過ごす時間を増やすため自ら望んで整斗王府勤めになる。
- 整斗王付き首席宦官。大柄なので武将のように見える。最下級の宦官として蔑まれ苦しんでいた自分を取り立ててくれた秋霆に忠節を尽くしている。
- 月娥の同僚の女道士。華やかな容色を持つが、身持ちが悪く、恋人をとっかえひっかえしている。
- 皇后付き首席女官。主を忠実に支え、汪皇后からも信頼されている。司礼監掌印太監・棘灰塵の愛妻。
- 汪皇后付き次席宦官。東廠の密偵としても働いており、重要な案件を密かに調べている。
- 皇帝付き次席宦官だが、東廠の密偵でもある。反逆者の娘である宰曼鈴を監視している。
- 東廠の長官。同淫芥・独囚蠅らを密偵として使う。保身を最優先する性格。
- 中流武門・汪家の娘。生母が女優だったため虐げられてきた。兄に頼まれて皇太子の妃の位階を定める「東宮選妃」に参加するが、目立たず生きることを望んでいる。その生まれから突出した演技の才能を持ち、礼駿の目に留まる。『後宮茶華伝』時点では、嘉明帝の皇后になっている。
- 宣祐帝の皇八子。決して玉座に近い皇子ではなかったが、母の望みを叶えるため「理想的な皇子」を演じ抜き皇太子となる。権勢欲渦巻く「東宮選妃」には興味を抱いていなかったが、そこで汪梨艶と運命的な出会いを果たす。『後宮茶華伝』時点では即位し嘉明帝となっている。
- 傍系から即位した皇帝。深く愛していた妃が大罪を犯したため冷宮に幽閉した。過去を引きずりながらも、李太后の命で李紫蓮を皇貴妃に迎え、計算づくの夫婦関係を結ぶ。怨天教に苛烈な弾圧を加えたことでも知られる。『後宮茶華伝』時点では、譲位し太上皇となっている。
- 都の染め物屋の嫡女。一度結婚したが、子ができないことを理由に離縁された。生来の聡明さゆえお忍び中の李太后に気に入られ、女性たちが権力争いを繰り広げる後宮を治めるために入宮。「寵愛される皇貴妃」を演じることに。『後宮茶華伝』時点では皇貴太妃となっている。
- 高氏が皇統を受け継ぎ支配する中華帝国。広大な国土を有し、繁栄を謳歌してきた。しかし、宣祐・嘉明年間には内憂外患が民を脅かし、王朝衰退の兆しが顕著になってきている。
- 宦官によって構成される皇帝直属の特務機関。「褐騎(かっき)」と呼ばれるスパイを宮廷内外のあらゆる場所に潜伏させて官民を監視している。取り調べの際に激しい拷問を行うことでも知られ、人びとに恐れられる存在。現在は怨天教を弾圧するため、邪教徒狩りを行う組織となりつつある。
- 「聖明天尊(せいめいてんそん)」なる神が下生し現世に楽土を出現させるという教義を持つ宗教。しばしば王朝転覆を謀って反乱を起こし、朝廷からは邪教として弾圧を加えられている。教徒は、日蝕で下半分が欠けた太陽を「半金烏(はんきんう)」と呼んで尊び、半金烏をかたどったものを信仰の証として身につけている。
後宮――それは、誰もが愛を求め欲に惑う、この世で最も豪華な牢獄。
シリーズ本編では語られなかった、大凱帝国の後宮に生きる皇族や美姫、宦官たちの秘されたエピソードを収録する『後宮史華伝』シリーズ短編集は、eコバルト文庫から第一部短編集として2冊が配信中。そして、第二部短編集として『後宮史華伝 すべて夢の如し』が集英社オレンジ文庫より2024年1月刊刊行! 『後宮染華伝』『後宮戯華伝』『後宮茶華伝』の登場人物たちが、あなただけに語る胸の内に、そっと耳を傾けてみては……。
- 鬼淵国の王太子・凌炎鷲は、凱に入朝する。そこで、宣祐帝の皇后となった尹白姝に「再会」して――。
- ある年老いた宦官が語るのは、紹景帝を廃位に追い込んだ「賊龍の案」の真実だった……。
- 紆余曲折を経て、汪梨艶と相思相愛になった皇太子・高礼駿は、一日千秋の思いで待ちわびた婚礼の夜を迎える。
- ※この特集「番外編」コーナーから読めます!
- 月娥に仕える女官の巧燕は、夫である宦官・奇幽の眉が奇妙な形に描かれているのを見て噴き出す。その眉を描いたのは?
- 賞月の変に関わり鬼獄に捕えられた宦官・冥朽骨は、誰よりも美しく冷酷な主、高月娘を一心に思い続けていた。
- 妓楼の一室で静かに語り合う公主・高淑鳳と皇子・高慶全の兄妹。兄は妹の恋が破れたことを察して……。
- 後宮を治めるため皇貴妃として入宮することになった共紫蓮は、初めて皇帝・高隆青の閨に召される夜を迎える。
- ※この特集「番外編」コーナーから読めます!
- かつて同淫芥に救われた爪香琴。今は「褐騎」となり、淫芥と同じ秘密の任務に就いている彼女が密かに抱く思いは――。
- 東廠督主・色亡炎と、皇貴妃付き首席女官・恵惜香は相思相愛の夫婦。二人が結ばれた訳は?
- 密命を帯び、東宮選妃に潜入していた宦官の独囚蠅。地方の名家に生まれた彼は、なぜ宦官に身を落としたのか?
- 最愛の母に突き放され、生きる目的を見失っていた幼い宰曼鈴を救ったのは、ある宦官の言葉だった。
- 後宮が雪で白く染まる冬の夜。美しい月の下で、高隆青と李紫蓮が交わしあう言葉とは……。
- ※この特集「番外編」コーナーから読めます!
- 宦官・易太監の養女でありながら、父の忠節により公主の位を授けられた夏瑶は、己の出自を亡父の弟子・同淫芥に問う。
- ※この特集「番外編」コーナーから読めます!
- 夫婦で過ごす夜に、愛しい妻・月娥の眉を描く秋霆。彼が欲しいものとは……?
- 汪成達は、太子妃となった妹の梨艶と宮中で対面。その心中に幼き日の梨艶との出会い、そして彼女への思いが甦る。