2021年 ノベル大賞受賞作文庫化!

みるならなるみ シラナイカナコ この青春は、あなたをブン殴るみるならなるみ シラナイカナコ この青春は、あなたをブン殴る

2021年ノベル大賞 大賞受賞作

みるならなるみ / シラナイカナコ泉サリ / 装画:NAKAKI PANTZ

新興宗教×ガールズバンド
17歳の才能が抉る、痛くて甘い青春少女小説

Music:大橋莉子 Vocal:黒瀬マナミ

STORY

みるならなるみ
男子部員は私たちを入れるのを嫌がった――
だから「女子限定」バンドを組んだ、
はずだった。
鳴海がギターボーカルを務めるバンドの欠員募集に応募してきたのは、
笑顔と口調がとんでもなく胡散臭く、とんでもなくピアノがうまい青年で……。
シラナイカナコシラナイカナコ
ごく普通の女子中学生・四葉は「幸福の子」。家では他人をお母さんと呼び、家族には四葉様と
呼ばれている。
たった一人の友達でいじめられっ子の加子に対し、四葉は友達だけど許せない、
友達だからこそ許せない、小さな大罪を犯す。

ガールズバンドと新興宗教、全く異なる世界に属する少女たちの鮮烈で泥濘んだ感情を、
生々しく繊細な筆致で描く、泉サリのデビュー作。

CHARACTER

みるならなるみ

  • 鳴海

    鳴海

    フェス出場を目標に活動するガールズバンド「Genuine」のギター&ボーカル。

  • チカ

    チカ

    鳴海と同じ中学出身で、高校でバンドを組むことを約束した。おしゃれ好き。

  • 焼肉

    焼肉

    ドラム経験者。いつもお菓子を食べていて、焼き肉はあだ名。

  • マリヤ

    マリヤ

    キーボードが抜けたGenuineの欠員募集に応募してきた、謎の“青年”。

シラナイカナコ

  • 四葉

    四葉

    「幸福の子」と呼ばれ、新興宗教「運命共有教」で崇拝される少女。

  • 加子

    加子

    四葉の唯一の友達。学校でいじめられているが、ある秘密がある。

  • 直くん

    直くん

    四葉と偶然知り合い、良き理解者となる。

REVIEW

読書メーター「読みたい本ランキング」
文庫部門週間1獲得!

ノベル大賞選考委員より

  • 日常的な事象が、作者のセンスと筆力によって(暗黒の)輝きを帯びる瞬間。世界に対する読者の認識を更新させる力に満ちている。ノベル大賞選考委員 三浦しをん
  • 異様な日常を淡々と描き、浮かれるでも酔うでもなく、心の暗いあやを逃さずすくい上げていた。主人公に対してもどこか突き放している作者の眼差しがクールだ。ノベル大賞選考委員 桑原水菜
  • この作品を書いたのが17歳って。賞賛の言葉としてふさわしくないかもしれませんが、あえて「末恐ろしい」と言わせてください。ノベル大賞選考委員 今野緒雪
  • 圧倒的に表現力が高い! 小説家というのは、このような文章が書ける人のことを言うのだ……と感銘を受けました。ノベル大賞選考委員 吉田玲子

「読書メーター」ユーザーより

  • 2本の中篇にて構成されてるが、共通するのはキャラ全員が他人に不安を抱えてることだ。 前半のバンドは人生が見えないことに不満を募らせ、後半のカルト家族は人生を見つけられないことを嘆いた。 ただ展開は苛烈でも、文章はシンプルで執着心もなく読みやすい。
    その淡々さが激変する夢のない環境や自分に対しても「そういうもの」で受け入れてしまう力強さがあった。 ままならないことも後悔も、未来の不安もあれど、人生はたった一つの佳作なのだ。のれんさん
  • バンドバカという言葉が似合いそうなほどバンドに青春を捧げている鳴海という女の子の話と、もう1人の主人公四葉を幸福の子と崇拝する宗教に苦しめられる女の子の話。どちらの話にも宗教が絡んでいて、感情が揺れてる様子やマイマイ様を崇める宗教の怪しげな雰囲気、逃げたくても逃げられない心苦しさみたいなものがちゃんと伝わってきた。私と同い年の17歳が描いてる小説と知ってびっくりした。平凡©さん
  • 『シラナイカナコ』で描かれたあの感情が染みた。新興宗教を信じる集団にいたから、等とは関係なく、独り孤独を感じている時に縋りつく微かな優越と攻撃的な意識と、裏腹な恐怖が混じり合った醜悪なカオス。その発露になった行動は、私にはとても理解できるモノだ。表す言葉のない混沌とした感情は、10代で失ったつもりだった。著者の年齢だからこそ形にできた”あの頃”の小説。スピードと摩擦と優しさと諦感、絶望と希望が力強くしなやかに一つになって目の前を駆け抜けて行く、そんな一冊だった。kinnovさん
  • ゆるく繋がっている2つの短編は、JKガールズバンドと新興宗教。夢に向かってもがきながら突き進むメンバーたちは、いろいろあれども胸熱!うんうん、かっこいいねで読み終え、これに対し暗くて閉塞感たっぷりの後半。2つの対比に圧倒された。2003年生まれの若い作者さん。しかも17歳の時に書かれたそうでびっくり(゚∀゚) 次作も絶対読む!えりこんぐさん

TRIAL READING

『みるならなるみ』

高三の春、アストロに二度目のエントリーシートを出した。余裕を持ってポストに投函しようと思ってたのに、書く内容は本当にこれでいいのか、字は汚くないか、記入ミスはないかしつこく読み直していたら、当日消印ギリギリになってしまった。

自転車で学校へ行く途中に封筒を投函しながら、ロックンロールって何の役にも立たないよなーとぼんやり思った。音楽に助けてもらったことはたくさんあっても、それで確実にできるようになったことは何もない。どんな名曲も人の背中を押すだけで、絶対的な力はない。それなのに私はバンドを始めて自ら音楽にひっついて、世界一腕力の強い子コアラみたいにしがみついている。振り落とされそうになって爪が全部はがれても、たぶん死んでも離れずにいる。それくらい好きなのだ。意味のあるなしに関係はなかった。

『シラナイカナコ』

目的地が見えてきた。真っ白い壁、クリーム色の屋根、童話の挿絵のような出窓。教会と思い込んでいる人も多いらしいその建物に、私はそうっと入る。
「ただいま」

チョコレートのような模様がついた木製のドアを開ける。
「おかえり、四葉様」

待ち伏せしていたような速さで、お母さんがリビングから出てきた。
「もうお湯の支度はできているから、早く部屋に荷物を置いて下りていらっしゃい」

お母さんの後ろにリビングが見える。中央にはベッドくらいの大きな水槽があって、なみなみと湯が溜められている。立ち昇る湯気で、照明がにじんで見える。
「お腹すいたな」私はつぶやいた。
「ご飯はお清めの後よ」お母さんが笑顔のまま短く言った。

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PROFILE

著者
泉サリ
2003年生まれ、埼玉県出身。『林ちゃん』で第209回コバルト短編小説新人賞入選。
高校在学中、『シラナイカナコ』で2021年度集英社ノベル大賞〈大賞〉を受賞、『みるならなるみ/シラナイカナコ』はその書籍化にしてデビュー作となる。
2021年ノベル大賞選考結果
大賞:泉サリ「シラナイカナコ」/
受賞者一問一答

MORE TRIAL

BOOK

「みるならなるみ/シラナイカナコ」泉サリ
2022年4月21日発売
価格:640円+税
ISBN:978-4-08-680444-8

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