集英社のライト文芸レーベル

CONTENTS

• １RIKU meets イチヤ。
  イチヤという人物を、
  RIKUはどうやって摑んだのか？
• ２『MY (K)NIGHT』に流れる
  LDHイズムと、
  樹島千草がLDHに心奪われたきっかけ
• ３ホラー好きな作家・樹島千草も驚愕、
  RIKUの怖くない＆ガチで怖いホラー体験談

RIKU meets イチヤ。
イチヤという人物を、
RIKUはどうやって摑んだのか？

岩谷ただいま発売中の読書情報誌『青春と読書』12月号に掲載されている、作家の樹島千草さん、THE RAMPAGEのボーカルRIKUさんと、パフォーマーである僕・岩谷翔吾の鼎談。12/1に公開される映画『MY (K)NIGHT　マイ・ナイト』でRIKUさんが3人の主人公の一人・イチヤを演じ、樹島さんが集英社文庫から発売中の映画ノベライズを執筆されたご縁から持ち上がった企画です。ここからは、誌面に収録しきれなかったフリートークを、ざっくばらんな雰囲気でお届けしたいと思います！

RIKUより裏話的な内容になりそうですね（笑）

樹島引き続きよろしくお願いします！

岩谷対談本編でも少しお話ししましたが、『MY (K)NIGHT』という作品は、恋愛がテーマに見えるけれど、付随する要素もいろいろありますよね。RIKUさん演じるイチヤは、「夢と向き合う」ことがテーマでしたし。

樹島そもそも、企画当初、イチヤたち三人は全然違うキャラだったそうですね。

RIKUえっ、それは知らなかったです。

樹島イチヤは「俺、嘘は嫌いだから、お客にだって駄目なことは駄目って言います」みたいな尖ったキャラで、刻は「俺は顔面がいいから」って人生イージーモードに乗っちゃってるキャラ。刹那は、夜の世界のてっぺんを目指す上昇志向キャラだったそうです。そこへ、中川（龍太郎）監督がご自身の解釈を入れて練り直して、今のイチヤ、刻、刹那になったんだと、打合せの際に伺いました。

RIKUそのキャラだったら、全然違う演技になってたでしょうね（笑）

樹島挫折や夢から逃げた罪悪感はなさそうですよね。

岩谷でも、イチヤはあの挫折を引きずってるところが人間臭くていいと思うんです。

樹島そういう面を演じる上で、どうやって役作りをされたんですか？

RIKU僕、音楽を目指す前はサッカー選手を夢見ていたんですが、諦めた経験があるんですよ。その時、子どもながらに「この先どうすれば」「自分は将来何をしたら」とぐるぐる悩んだ時期があって、目的が見つからないから何をやるにも中途半端になるっていう経験をした。だから、写真家という夢を諦めた劣等感とか、結果を出し始めた元仲間への嫉妬を抱えたイチヤの気持ちは分かるんです。僕も、クラブチームで自分より巧い奴に嫉妬したことがあるから。だから、イチヤの気持ちを理解して演じるという意味では、あまり苦労がなかったです。

樹島なるほど、そんなご経験が……。中川監督からは、物語やテーマについての説明みたいなものはあったんですか？

RIKUそういうのは全然なかったですね。だから「イチヤ」という人物を理解するところからスタートでした。本読みやリハーサルの時に、僕と中川監督で、「俺はこの時のイチヤはこう考えていたと思います」「自分はこうだと思うんだよね」って、それぞれの考える「イチヤ」像をシェアして理解を深め、そこから「ネオイチヤ」を作っていくみたいな……。だから、現場でどんどん変化があって。『青春と読書』での対談で樹島さんが挙げてくださったイチヤとミユポ（miyupo）のボクシングシーンも、もともとやる予定じゃなかったんですよ。

樹島えっ？　そうだったんですか。

RIKUはい。僕は常にトレーニングしていますけれど、（ミユポ役の）夏子さんもキックボクシングの経験があるらしくて。で、「ボクシングなら、イチヤの感情の動きを表現しやすいのでは？」となって、試しにやってみてよ、と言われて撮ったのがあの映像なんです。

岩谷へぇ！　その場のノリだったんですね。観客目線で見ると、あのシーンがないとイチヤのエピソードが成立しないぐらい印象的なシーンなのに。

RIKUだから、あのシーンの僕らのリアクションは全部アドリブなんです。

樹島私、ノベライズの初稿を書く時、お二人の言葉を映像からそのまま書き起こしましたよ。じゃあ、もしかしてあのパートの最後でイチヤが言う「なんであの人、やったら全部やりっぱなしなんだよ」の言葉も……。

RIKUあれもアドリブですね（笑）

樹島あのひと言、すごく好きなんです。ミユポに振り回されてるイチヤがよく表れてて。

岩谷今、確認してみたんですけど、確かに台本にはない。完成した映像と台本を比較してみると面白いですね。映像を観ている分には、どこがアドリブなのか分からないぐらい自然だったのに。

RIKU出会ったばかりのミユポとイチヤだったら、ああいう会話は生まれなかったと思うんです。イチヤがミユポの魅力を知るにつれて、次第に彼女に心を許して。自分は顧客の心を救う側の「デートセラピスト」なのに、彼女に救われているところもあって。

樹島分かります。あのシーンの二人は、「顧客とデートセラピスト」ではなかったです。

岩谷RIKUさんとしては、台本の印象と仕上がった映像の印象に違いはあるんですか？

RIKUそうだね。台本を読んでいる段階では、イチヤのイメージってまだ漠然としていて抽象的でした。撮影に臨んで初めて、彼の心の動きに気づいたところも多かったですし、実際に演じたイチヤは、台本時点でのイチヤの印象とは全然違うものになりましたね。ミユポのリアクションにイチヤがイラッとして、その感情の動きが表情に現れてたり。そういうのが結構あって、映像作品のよさですよね。

樹島確かに、最初のミユポは結構感じが悪かったですもんね（笑）。でも、撮影は台本通りの順序では進まないんですよね？

RIKUいえ、ミユポとのシーンはだいたい台本順に撮りました。だから、撮影を重ねるごとにミユポを演じた夏子さんとの心の距離も近付いてきて、より自然に演じられました。待機中も、最近はまっていることとか、いろんな会話をして。素敵な方だなと思いました。

岩谷撮影期間は、そんなに長くなかったですよね。

RIKU中川監督の中には、撮る前から明確な完成図があったみたいで、撮影に無駄がなかったんです。ひとつひとつのカットに、正解がある。だから、パズルのピースをひとつずつ撮っていく感じでした。

岩谷撮ってる時から、もう監督の頭の中で編集しているんでしょうね。

RIKUうん。鬼才だな、と思いました。

岩谷すごくいい画を撮られる方ですよね。横浜が本当におしゃれで、綺麗に見えました。RIKUさんのパートは、横浜で撮影したんですか？

RIKUはい、横浜が中心ですね。中華街も行ったし。

岩谷ちなみに、役作りはどうやったんですか？　デートセラピストですよね？

樹島確かにそこは気になります。

RIKUデートセラピストなんてやったことないから（笑）。ちょっと短絡的ですけれど、デートセラピストってホストに近いのかなと思って、ROLANDさんや現役ホストの方たちのYouTubeを見ました。ホストって派手な振る舞いの印象が強いけれど、そういうのより仕事の打ち合わせとか、プライベートの時間とか、彼らの気持ちが汲み取れるものを参考にしました。

樹島お金を稼ぐよりも人を癒やすことに特化したホスト、みたいなイメージでしょうか。

RIKUそんな感じですね。自分が提供した成果によって、お客様が払うお金を自分自身で決めてもらう、という感覚でイチヤを演じました。

『MY (K)NIGHT』に流れる
LDHイズムと、
樹島千草がLDHに
心奪われたきっかけ

岩谷樹島さんは普段はご自身の小説を書かれているということですが、そういった執筆とノベライズの書き方は違うんですか？

樹島全然違いますね。ノベライズは最初に映像があるので、後は自分がそこからどれだけ読み取れるか。化石の発掘作業みたいな感じです。

岩谷なるほど、分かりやすいたとえですね！

樹島岩谷さんも小説を書かれているじゃないですか。私が『MY (K)NIGHT』のノベライズで下手を打ったら、岩谷さんに代わられちゃうんじゃないかって、緊張しました（笑）

岩谷いやいやそれはないです（笑）。今回のノベライズの初稿はわずか1週間で書き上げたということでしたが、ご自身の作品を一からだとどれぐらい時間がかかるんですか？

樹島ものによりばらつきがありますけれど、3ヵ月とか4ヵ月。取材の必要があるものだと、半年ぐらいはかかってしまいますね。

岩谷じゃあ、今回のノベライズは本当に早かったんですね。

樹島そうですね。自分でもちょっと異常なスピードだったと思います。私、普段はしっかり睡眠を取る方なんですが、『MY (K)NIGHT』を書いている間は全然眠くならなくて。それぐらい吸引力のある映画だったんですよ。キャラの心情、物語の展開、何より映像が美しくて、常に引きつけられてしまう。イチヤ、刻、刹那のそれぞれのエピソードにも、しっかり特徴的なテーマがありましたし。

岩谷というと？

樹島イチヤは、「主人公の成長物語」。刻は沙都子の自立を描いた「クライアント側の成長物語」。刹那は「婚約者としてクライアントの母に会う」という提示された課題に、どう対応していくのか。それぞれテーマが異なるから、交互に語っていってもどれかが埋もれるということがないんです。イチヤパートはイチヤの心情をしっかり書く。刻パートは沙都子の行動に表れる彼女の変化を書く。刹那パートは、課題に対する伏線や要素を散りばめて、いかにストーリーに引きを作るか。おそらく、監督が計算してこの構成にされているのではと思うんですが、ノベライズもすごく書きやすかったです。担当さんからも「ノリノリですね！」って言われてしまって……自分の作品では「さて今日も世界を救いに行きますか」なんて直球のセリフ、なかなか書けないけど、『MY (K)NIGHT』の世界観ならどんどん書けるのが気持ちよかったです（笑）。

岩谷確かに（笑）。中川監督とは、事前に打ち合わせされたということですが……。

樹島はい。最初の打ち合わせで、台本と映像を観た感想をものすごい勢いで伝えてしまったんですが、監督から「そうなんですよ！　その通りです！」っていうリアクションをいただいて。「よかった、私はこの作品を読み違えていなかった」って思いましたし、ありがたいことに、原稿にも修正はほとんど入らなかったです。

岩谷へえ～、それはすごい！

樹島イチヤパートには、イチヤのライバルとして写真家の元友人が登場しますが、中川監督はご自身を彼のような存在だととらえているそうです。天才であるイチヤに勝てない彼。でも、イチヤも写真の世界から逃げた罪悪感を抱えているので、決して類型的な天才ではないんですよね。

岩谷ちなみに、樹島さんはオリジナルの小説はどんな物を書かれてるんですか？

樹島スポーツ物とか青春物とか、サスペンス。それから、連続殺人鬼の話……。

岩谷連続殺人鬼!?

樹島はい。実は、恋愛物って書くのは少し苦手で。でも『MY (K)NIGHT』のノベライズのお話をいただいた時「やります！」と即答しました。以前からLDHのクリエイティブが大好きで、ここで断ったら絶対に後悔すると思いましたから。

RIKUそれは嬉しいですね！

岩谷何がきっかけでLDHにハマったんですか？

樹島『HiGH&LOW』です。THE MOVIEでハマって、そこからずっと追いかけてます。

岩谷いったい何がそんなに刺さったんですか？

樹島RUDE BOYSのスモーキーが本当に好きなんです。でも、『HiGH&LOW THE MOVIE 3 FINAL MISSION』でスモーキーがあんなことになってしまったので、もうやさぐれてしまって。その後『HiGH&LOW THE WORST』が上映された時も悲しい気持ちを引きずったまま観に行ったのですが、行ったら行ったで鬼邪高全日の大暴れが本当に楽しくて、またハマってしまいました。『HiGH&LOW THE WORST X』では、RIKUさんのソロ曲『Stand by you』が本当に素晴らしかったです！

RIKUありがとうございます。『THE WORST』の時、（川村）壱馬と（吉野）北人が役者としてメインキャラを演じたので、自分が「奏でる者」として音楽を提供したくて、劇中曲のコンペに参加したんですけれど、落選してすごく悔しかったんです。だから『WORST X』で曲を担当させてもらえることになって、気合いが入りまくりでした。自分の歌はクライマックスシーンで使われることになったので、映像も台本も何十回も見て、「この時の須嵜の表情、何を思ってる？」とか、「楓士雄は何のために拳を握ってる？」とか、歌詞に楓士雄と須嵜の気持ちを入れ込んで、でもちょっとTHE RAMPAGEっぽさも感じられる歌詞にしようと思って、いろいろ詰め込みました。

樹島須嵜はあまり喋らない人なので、あの曲があるからこそ彼の心情が伝わります。

岩谷以前、僕とRIKUさんは一緒に『ETERNAL』というミュージカルに出演したことがあるんですが、その時の経験も作詞にインスピレーションを与えてくれたんですよね。

RIKUうん。『ETERNAL』は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されて一度公演中止になったんです。稽古場でその連絡を受けてガックリ肩を落としていたら、翔吾が僕の隣に立ってずっと背中をさすっていてくれたんですよ。作詞中にそのことを思い出して、あの時の気持ちはきっと『HiGH&LOW』にも通じるなと感じたので、歌詞にしました。「そんな僕のそばを離れずに/何も言わないで肩を抱いて/君は寄り添ってくれた」ここは、まんまあの時の翔吾です。

樹島なんて素敵なエピソード……。

RIKU『WORST X』のストーリーに、自分の心情と、THE RAMPAGEのヒストリーと。実はあの歌詞、トリプルミーニングになっているんです。

樹島そのエピソードも含めて本当に最高です。続編を本当に心待ちにしています。

岩谷樹島さん、すごくカロリーの高いハイロー熱をお持ちなんですね（笑）

樹島はい！　なので、岩谷さん演じるケンとやましょー（山本彰吾）さん演じるヒカルの再登場も楽しみにしています！

RIKU確かに、今の二人が演じるケンとヒカルを見てみたいな。

岩谷出番がないからめっちゃやさぐれて、不良になって帰ってきたりして。『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』ではすごく意味深に終わったのに、その後どうなったのは分からないままで（笑）。実は、一度話はあったんですよ。ケンとヒカルが山王連合会から鬼邪高に行くっていう話が。だからラストで、ケンとヒカルの二人だけが、月明かりの下を意味深に違う道を歩いていく……。でも、ただ単に勇ましく去っただけでしたね。本当の意味でハイローを「勇退」しました（笑）。

樹島そんなのは嫌だ（笑）。でも、鬼邪高に入るのは全然アリな感じですけれどね。もしくは瀬ノ門に入っても全然いいですけど！

岩谷入る気満々で勇ましく月明かりの下を歩いたんですけどね（笑）。

樹島でも、今MA55IVE(THE RAMPAGE)さん、すごく活躍されてるから、やましょーさんがMA55IVEさんを引き連れて入ってくるのもありなのでは？　……あ、でもLIKIYAさんがもうMIGHTY WARRIORSに入ってますもんね。

岩谷鬼邪高にも（鈴木）昂秀と龍がいますよ。

樹島でも、そのふたつが合わさればまた熱い連合になる！

岩谷高校生がマフィアみたいなMIGHTY WARRIORSを従えるんですよね？　すごい世界線……。でも、あの世界はマルチバースだから、いくらでも可能性は広がりますからね。

樹島創作者として、自分だったらブレーキかけるところをノーブレーキで突っ走ってくれるのが、『HiGH&LOW』の本当にいいところなので。

岩谷これまで僕が対談させてもらった作家さんには、ハイロー好きの方が多いんですけれど、みなさんそう仰いますね。

樹島三浦しをんさんや、麻布競馬場さんもそうですよね。

岩谷普通だったらためらうところを、ブルドーザーのようにパワープレイで突き進んでいく（笑）。

樹島私は多分、あの勢いにハマったんだと思います。

岩谷台詞回しもパワープレイ。そういえば『MY (K)NIGHT』も、「世界を救っちゃいますか」なんて、普通なら恥ずかしくて言えないことをカッコよく言ってしまう。

樹島「そろそろナイトの時間ですか」っていう刹那の台詞も、タイトルにかけてるのは分かるんですけど……カッコよく言ってのける川村さんはさすがです（笑）。

ホラー好きな作家・
樹島千草も驚愕、
RIKUの怖くない＆
ガチで怖いホラー体験談

RIKU樹島さんはホラー系の作品をお書きになるということなんですが、どういう系統がお好きなんですか？

樹島じめじめした、湿度のあるホラーですね。『貞子』は怖くて面白かったです。

RIKU実話系のホラー映像はご覧になりますか？　実は僕、そういうのが好きで。ホテルで眠れない夜によく見るんです。

岩谷だから寝られないんですよ！　僕、ホラーは絶対無理です。

RIKU「これは作り物だな」と分かってしまうものもあるけれど、時々本当に怖い映像もあるんですよ。僕、何回か実体験があるので、本当にヤバいものはそうだと分かってしまうんです。

樹島それは、映像の怖さに比例しない……ということ？

RIKUそうですね。

樹島そういえば、THE RAMPAGEには、他にも霊感がある方がいらっしゃいますよね？

RIKU（与那嶺）瑠唯ですね。数日前、一緒に沖縄へ行った時、二人でぜんざいを食べに出かけたんです。空いていたお店に僕と瑠唯が入って、注文したぐらいからすごい勢いでお客さんが増えて。「RIKUさんて招き猫？　自分が入ったらお店に人が増えたりしないですか？」って言われて。「よくある」って答えたら「俺もなんですよ」って。ちょっとスピリチュアルっぽいですよね（笑）。それから、自分の夢に誰か一人だけが出てきたら、その人は絶対何かで悩んでいるんです。で、起きて「何か悩んでるんじゃない、大丈夫？」って連絡すると「RIKU、なんで分かったの？」って言われる。
あと、「座敷わらし」と「小人」を見たことがあります。小人を見たのは、EXPGの特待生オーディション直前ですね。小人って幸せを呼ぶ存在らしいです。なんだか誰かに見られている気がして振り向いたら、小さいおじさんが自分を見ていて、思わず声を上げたら逃げていった。そしたらオーディションに合格したんですよ。THE RAMPAGEのオーディションの前も、レッスンが終わって、夜中に駅から自転車を漕いでいたら、電柱の所に着物を着たおかっぱの女の子が立っていて、なぜかその子だけモノクロに見えたんです。その時は「こんな時間に、こんなちっちゃい女の子が一人で大丈夫かな。早く帰りなよ」程度しか思わなかったんですけれど、通り過ぎてから「……ちょっと待てよ。あの子モノクロだぞ。着物着てるぞ!?」って思って。調べてみたらどうやら「座敷わらし」らしいなと。それからしばらくして、THE RAMPAGEのオーディションに合格したんですよ。

樹島話を聞いただけだとホラー体験みたいですけれど、吉兆なんですね。

RIKU人生の分岐点の前に、こういうことが起こるんです。

樹島今後も、そういう存在を見たらいいことがある、ということですね？

RIKUはい。座敷わらしと小人はみんなに会ってほしいですね。全然怖くないし、会うと幸運が舞い降りるから。それとは別に、白い服を着た女の人に追いかけ回されたことがあって……それは怖いやつでした。

樹島夢とかではなく現実で？

RIKU現実です。斜めに傾いて立ってて、貞子みたいに、黒くて長い髪がダラリと垂れ下がってる。それに気づいた瞬間、「ヤバいもの見た！」と思って目を逸らして、自転車を全速力で漕いで逃げて……林にさしかかった時「まさかね」と思って振り返ったら、道の真ん中にその女の人がいるんですよ。

樹島それは怖い‼

RIKUどうにか家に帰って自転車を止めて、急いでエレベーターに乗り込んで、自宅がある上層階まで上がっていく途中に、エレベーターの窓から白い服の女の人が立っているのが見えて。もう怖くて怖くて、家に入って鍵をかけたんですけど……僕の部屋にある磨りガラスの窓の外を、白い影がすーっと歩いてて。「……ついてきたあいつ！」ってなりました。あれはガチで怖かったですね。

岩谷怖すぎる‼　RIKUさんそんな経験してたんですか!?

RIKUそれ以来、白い女の人には遭ってないんですけれど、本当に怖かった。ダンスやアートを生業にしている人って、人と違う周波数を発してるらしくて、そういう存在が寄りつきやすいらしい。だから、たまに「この道を通っちゃいけない気がする」「なんか嫌な気配がする」という勘が働くことがあります。そういう時は、わざと遠回りしたり。

樹島RIKUさんの話を聞いてる岩谷さんの顔が……！

岩谷もう、言葉が出ないです……。僕はそういうの、まったくないので。怖がりなので！　もしそういう感覚があったら、多分生きていけない。

RIKU心臓に悪いよね（笑）。僕はそういう感覚があるから、あまり怖くないのかもしれない。だから、映像を見ていても本当に危ないものは分かりますし、「これは除霊に行ったほうがいいんじゃないの？」って思ったりします。

岩谷軽い気持ちでホラーを掘り下げたら、思ったよりもヘビーな話になりましたね……。

樹島『MY (K)NIGHT』からの「怪談ナイト」になっちゃいましたね（笑）。今日は興味深い話をたくさん聞かせていただいてありがとうございました。本当に楽しかったです。

岩谷こちらこそありがとうございます。

RIKU『MY (K)NIGHT』の上映イベントにも、ぜひ遊びに来てください。会場ではノベライズのご紹介もさせていただきますね。

樹島ありがとうございます！　映画の公開、楽しみにしています！

【対談者プロフィール】
いわや・しょうご
1997年生まれ。2017年、総勢16名からなるダンス＆ボーカルグループTHE RAMPAGEのパフォーマーとしてデビュー。映画「チア男子‼︎」への出演ほか、日本将棋連盟三段や、実用マナー検定準一級の資格取得など趣味多数。WebマガジンCobaltにてブックレビュー『岩谷文庫』を連載。また、朗読劇の脚本など、執筆活動の幅を広げている。

RIKU
2017年、THE RAMPAGEのボーカルとしてデビュー。音楽ナタリーで「音楽大陸」を連載のほか、bayfm78でレギュラーラジオ番組「WEEKEND THE RAMPAGE」のメインパーソナリティーを担当。ミュージカル「『天使について』～堕落天使編～」、「REAL RPG STAGE『ETERNAL』」、「REAL RPG STAGE『ETERNAL2』-荒野に燃ゆる正義-」にて主演を務めるなど、歌唱以外にも幅広く活動している。

きじま・ちぐさ
東京都出身。某大学文学部卒業。著書に『映画ノベライズ 虹色デイズ』『咎人のシジル』『太陽の子 GIFT OF FIRE』『スケートラットに喝采を』『神隠しの島で蒼萩高校サッカー部漂流記』『映画ノベライズ 耳をすませば』がある。