これまでの受賞作品
第78回
応募テーマ
タイトル
『君と、放課後の教室で』
あらすじ
高2のハルカは、クラスの友達ともうまくやっているが、まわりに合わせてばかりいる自分に、ちょっと嫌気がさしていた。そんな折、転校生がやってくる。彼は、小さい頃によく遊んでいた幼なじみのトモヤだと判明して…!? あの頃は泣き虫だったのに、今では背が高く、クールな男子になっていて驚く。ある日、トモヤに「無理して笑ってない?」と図星をさされるハルカ。「そんなことない!」とつっぱねるハルカだったけれど…。毎週水曜日の放課後、トモヤが部活に行くまでの放課後の教室で5分だけ話をするのが日課になったハルカとトモヤ。トモヤと出会うことで、ハルカの毎日が、色づいていく——。
今回の講評
第78回イラスト大賞では、久しぶりに青春ストーリーがお題として出題されました。主人公2人が放課後の教室で話をする、という物語をどのような絵に落とし込むか。ファンタジーや時代ものと比べて派手な要素がやや少ないゆえに、描く基礎力が求められた回になりました。設定を受け止めストレートに表現するか、あえて捻って表現するかは描く人しだいです。今回、前者はやや構図や要素が似てしまう傾向がありましたが、高い評価を受けたのもまた、ストレートにお題を描いた上で、自分の個性を表現した作品でした。テーマのある作品を描く時は、まず自分がストレートに描く場合、どんな作品をつくるのかを構想しては。それからどう工夫するかを考えるとよいかもしれません。
大賞
該当作なし
入選
mugicoさん(兵庫県)
今回入選したmugicoさんは、これまでに応募した作品が佳作、佳作あと一息に入ったことがある実力派。毎回構図に工夫がこらされていて、今回もカラーでは現在と過去のハルカとトモヤが交錯する構図が評価されました。青春イメージを想起させる淡い色使いと、全体のトーンにのっとった描線の使い方にもセンスが感じられます。一方でモノクロは、学校内の階段ですれ違う二人をシンプルに描くことで、見る人に二人の関係性を想像させることに成功しています。一点だけ、トモヤの制服が社会人のスーツに見える点は気になりました。基礎力がある方なので、制服を制服らしく描くことは難しくないと思われます。資料をあたるなど、小さな手間を惜しまない作品づくりを心がけてください。
佳作 あと一息
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未定さん
(北海道)モノクロの完成度が抜群に高かったです。ハルカとトモヤの配置に工夫があり、ポーズと視線を見交わすところも素敵。陰影表現としても背景のデザイン要素としても、トーン処理の使い方が非常に巧みでした。制服の質感や教室の描写など、端々に高い技術が感じられます。カラーの構図にも工夫が感じられますが、主人公ハルカの相手役であるトモヤが表紙で後ろ姿なのは、企みだとしてもちょっともったいないかもしれません。また、カラーについてはやや描写が均一で見る目が惑うので、光や色の演出をもう少し強め、視線誘導を意識してみてはどうでしょうか。
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青戸水色さん
(東京都)ハルカもトモヤも非常に美形キャラに描かれていますが、高校生らしいハルカのかわいらしさと、「クール」というトモヤの特徴がとらえられていて魅力的です。また、二人が着ている制服がかわいくデザインされているのも目を惹きました。モノクロは、コマ割風に描くことで、一枚のイラストに二人の様々なシーンが盛り込まれ、見ていて楽しさがありました。ただし、人物紹介イラストとしてどう使えるかは再考するといいかも。カラーは夕焼け風の色使いに雰囲気があり素敵ですが、若干エフェクトがうるさくなっているので要素の盛りすぎには注意してください。
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八橙さん
(兵庫県)前々回は佳作あと一息、前回は佳作と3回連続で上位に入っている八橙さん。カラーもモノクロも、人物の表情がとても魅力的でした。特にモノクロで、子ども時代と現在のハルカとトモヤが逆の表情に描かれていて、かつその表情が柔らかく自然なのがよかったです。人物のみならず、背景まで行き届いた描写も好印象。たとえば教室は、机や黒板、ロッカーなど直線的な要素が多いのですが、ただまっすぐな線を組み合わせて描くだけでは違和感が出てしまいます。八橙さんの作品では、細かいパーツの角度や、あえて微妙に角度をずらして椅子を配置するといった工夫で、リアルな教室空間を描くことに成功しています。
佳作
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二葉やしさん
(宮城県)多くの色を盛り込んでいるのに、ごちゃつき感がなくまとまりがあるカラーにセンスの高さを感じました。小物の使い方も、一見雑然としているのに、リアルな高校生の持ち物と演出としての風船が調和して魅力的です。モノクロは、カラーと対照的にスッキリした構図でまとめている点が好印象。ただし、主人公のハルカの顔が眼鏡でよく見えないのは勿体ない。2点のうちどちらか1点は、キャラの造形をしっかり見せてみてはどうでしょう。
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askichiさん
(東京都)ハルカとトモヤが両方男子、つまりBLものととらえた解釈が意欲的! 描かれている小物で、ハルカはどうやらグミが好物、トモヤは剣道男子といったキャラの人物像まで表現できているのもよかったです。カラーは気取らない自然な表情とポーズから二人の関係性が伝わってきて、とくに魅力的でした。線画は絵柄に対して描線の太さや、線が交わる部分の処理などがやや気になります。あと一息ブラッシュアップを意識してみては。
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ぽぽたさん
(東京都)お題ではハルカとトモヤという二人のキャラが提示されていますが、あえてハルカ一人にフォーカスし、彼女の眼鏡にトモヤの姿を映りこませる企みがよかったです。トモヤを見詰めているであろうハルカの、あえて感情を見せないよう頑張っている表情も印象的。全体として表情は魅力的に描けていますが、体のデッサンがやや気になるので練習を重ねてみて。またモノクロはもう少し陰影の処理をつけるとさらに完成度が上がるでしょう。
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もふにさん
(東京都)カラー、モノクロとも優しいタッチの色使いと描線、要素を描き込みすぎずシンプルにまとめた構図には少女まんが的な魅力があり、青春物として好感度が高い作品になっていました。これはもふにさん以外の方にもお願いしたことですが、モノクロのイラストはグレースケールの「塗り」ではなく、トーン処理で陰影を表現した作品を描いてみてください。コミック的な描写に習熟することで、さらなる実力アップに繋がります。
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海夏さん
(神奈川県)キャッチーさのある絵柄で、ハルカを可憐な少女らしく、トモヤを力強さもある少年として明確にキャラデザインできているのがGood。表情からも二人の関係性が伝わり、特にハルカの「恋する表情」は魅力的でした。背景は気を抜かずきっちり描き込まれていてとてもよいのですが、制服の質感の表現にやや甘さがあるように感じられました。衣装の完成度を上げると、さらに魅力が高まりそうなので、ぜひ意識してください。
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Shihoさん
(福井県)自分の個性となる絵柄をきっちり確立しているShihoさん。その絵柄の良さを最大限にアピールする描き方も、自身で把握できているのが強みです。モノクロの階調表現がとても素敵なのですが、一度トーン処理でまとめたイラストも見てみたいので、ぜひ次回作で挑戦してください。ハルカの感情のゆらぎの一瞬をとらえた表情は素敵です。テーマをストレートに描いたカラーは、あと一歩構図や表現に工夫があるとよかったかも。
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木成天音さん
(大阪府)青春ものの表紙かと言われるとやや違和感があるのですが、特にカラーは一度見たら目が離せなくなるようなインパクトが評価されました。カラーもモノクロも非常に勢いのある描線で描かれていて、荒削りなのですがのびしろを感じさせられます。まだまだこれから力を伸ばせると思われますので、デッサンや線の描き方など、基礎力を高めることを意識して練習してみてください。次回作にも期待しています。
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稲猫ネムさん
(兵庫県)毎回異なるテーマに精力的に応募し、佳作に入る実力に拍手を送ります。カラーは放課後の教室、というお題を工夫のある構図で描けているのがよかったです。窓から入る光の使い方を意識すると、もっとリアルさが出るでしょう。ショートカットのハルカのデザインも個性がありいいですね。モノクロイラストは、ここ数回「まんがのコマ割風」パターンで固定されているので、次回は異なる構図や描き方にも挑戦してみてはどうでしょうか。
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RiBさん
(兵庫県)ハルカの表情のちょっと照れた感じがかわいらしく、モノクロでいろんな表情を描けているのがいいですね。一方でトモヤはデザインにちょっとクセがあり、好き嫌いが分かれそうな点が気になりました。また、女子の体のデッサンにやや疑問を感じるところも。首、肩、腕の関節の関係、手の大きさなど、コミックイラストであってももう少しリアルなデッサンを踏まえて描けると、さらにイラストとしての説得力が増すように思われます。
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桜屋さん
(佐賀県)人物も絵の一要素ととらえ、空間そのもので見せるカラーは、水彩風の塗りや、あえてシンプルに描かれたハルカとトモヤの表情とあいまって不思議な魅力を醸し出しています。モノクロにハルカと友達を描くことで「ハルカとトモヤ二人だけの物語」ではなく、二人の周辺の人々も想像できる絵になっている点がよかったです。ただしモノクロは塗りでカバーできないので、線画の完成度をさらに高めるよう練習してみてください。
もう一歩の方々
かるらさん(埼玉県)/ないしさん(東京都)/凡俗さん(東京都)/猫まんぢうさん(長野県)/真田由貴さん(静岡県)/タマムラカルボさん(三重県)/Nai2さん(奈良県)/inmnさん(兵庫県)/峪蓮緒さん(広島県)