これまでの受賞作品
第77回
応募テーマ
タイトル
『同期の佐山くんがニガテです!』
あらすじ
商社で働くキョウコは29歳、部下からは慕われ、上司からは頼られるバリキャリ女子…ではなく、部下には手を焼き、古い価値観の上司に挟まれ毎日頭を抱えていた。「もうやってられない!!」と思っていた矢先、部署異動で、同期の佐山がやってくる。佐山は同期でもお調子者キャラ。異動して1週間もしないのに、上司とも部下ともうまくやっている様子。どこか空回りしがちなキョウコを、冷静に見る佐山に「もうちょっと、人に任せたら?」と言われ、カチンとくる。ちょっと苦手だな…と思っていたのに、とあるプロジェクトをキョウコと佐山の2人で担当するハメになり…!? ドタバタお仕事コメディ。
今回の講評
第77回イラスト大賞では、初めて「現代お仕事もの」のお題が設定されました。小説だけでなくTVドラマでも人気作が多いジャンルですが、今回寄せられた作品は「オフィス風景」の解像度が少し低めに感じられました。物語の舞台は「商社」と提示されていますが、どんなオフィスで、そこで働く人はどんな服装をしているのか。「自分は経験したことがないけれど現実にある世界」を描く時、想像に頼ってしまうと説得力が不足しがちです。 資料に当たる、類似の先行作品を研究するなど取材してから描くことで、作品の説得力が増します。また、現代物では人物を年代別にきちんと描き分けるスキルも必要。特に男性は少年と青年の体格を描き分けられないと社会人に見えません。現代もののイラストを制作する時は、ぜひ気をつけてみてください。
大賞
該当作なし
入選
廬 さん(東京都)
廬さんの作品は、キャラクターの魅力はもちろん、オフィス風景を描いた背景要素の解像度の高さが評価されました。私服で働くキョウコとスーツ姿の佐山はともにコンサバすぎないファッションで、フィクションのイラストではあるものの「こういう商社の人、いそう」と感じさせる線をついています。カラー作品は社内のフリースペース風空間が背景で、モノクロでもいかにも「ありそう」なデスク風景を描き、作品の世界観をしっかり絵で表現できてる点がとてもよかったです。応募の必須要件ではありませんが、カラーで画面いっぱいに人物を描きつつ、タイトルの配置を提案していたのが好印象。モノクロで、人物デッサンにほんの少し違和感があるので、工夫したアングルで描く際は人体を違和感なく描くことを意識するとよいでしょう。
佳作 あと一息
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葵 さん
(千葉県)淡いピンクとネイビーの2トーンでまとめたカラー作品、上部に抜け感があり、 足下はカチッとまとまっている配色センスがよいですね。キョウコと佐山のキャラ造形も、お題の設定をふまえたリアルさがあり好印象でした。カラーは俯瞰した目で描けていると思うのですが、全体のバランスを重視しているためか、見た瞬間パッと目を惹くアピール要素がやや弱いので、視線誘導を意識した構図づくりを心がけてみては。モノクロでは、おじさんキャラを上手に描けているのがとてもよいです。ただし、物の質感にかかわらず線のトーンが同じなため、モノクロが全体的に粗く見えてしまいます。線の太さや強弱を、質感に合わせて工夫できるとよいのではないでしょうか。
佳作
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髙橋奏衣 さん
(宮城県)人物の表情がとても魅力的で、佐山とキョウコ、ともにコンサバなスーツスタイルでありながら、男女の体つきの差をきちんと描けているのもよかったです。ただし、カラーはまったく背景がなく、モノクロも背景は最低限に留まっている点が気になりました。作品をどの程度描き込むかは作者の意図によりますが、背景要素は作品の雰囲気作りに大変重要です。テーマを咀嚼し、背景込みで構図を考える練習をすると、大きな武器になるでしょう。
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風間涼子 さん
(埼玉県)カラー→モノクロと見ていくと、キョウコと佐山の表情やポーズに変化があり、二人の関係性がいい方向に変わっていることを感じさせる構図。ストーリーを表現しようという工夫のある作品になっていました。かわいらしさの中に大人っぽさもある目鼻立ちの描写も、オフィスものというお題にうまく合っています。モノクロ作品は、グレートーンで塗った仕上げになっていますが、トーン処理にもぜひ挑戦してみてください。
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七峰さち さん
(東京都)丸みと柔らかさのある独特の描線 と、どこかコミカルな表情づけがあいまって、とても親しみがもてるキャラクターが描けています。特に、モノクロではあえて崩れた表情を描くことで、キョウコと佐山の関係性を表現できているのがよかったです。注意点としては、カラーの二人の服装がともに青基調+インナーが白で似てしまっている点。また、モノクロはカラーより線が少し太く重たい印象を受けますので、太さや強弱の付け方に注意するとよいでしょう。
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佳ヶ さん
(愛知県)構図もキャラクターの表情も、キョウコと佐山以外のオリジナルのモブキャラも、とてもコミカルで個性的。オレンジと青の補色を大胆に配しているのもインパクトがあります。今回、キャラのイキイキとしたポーズと表情で、お仕事ものという題材を印象づける戦略には成功していると感じられます。次回はぜひ「恋愛要素」を意識した作品も見てみたいです。ただし、画面が平面的なのは勿体ないので、奥行きや陰影を意識した作品づくりにも挑戦してみては。
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なつかえる さん
(愛知県)カラー、モノクロとも描かれている人物は共通していますが、主人公のキョウコと佐山に加え、「価値観が古い上司」「手を焼いている部下」と、お題に提示された人物をしっかり落とし込み、それぞれのキャラの関係性を絵で描写する意欲を感じました。ただし、人物の体つきの描き分けがやや弱い点が気になります。性別と年代に応じた骨格と体の厚みを描き分けられるよう意識してみましょう。
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あずきあんこ さん
(大阪府)お調子者な佐山とモヤモヤするキョウコの内面を色で表現したカラー、個性的なキャラを配したモノクロ、ともに描き方がこなれていて安定感抜群です。ホストや御曹司のような佐山くんの造形は商社という設定には一見そぐわず、違和感込みでインパクト大。人物の表情はとても魅力的ですが、構図がやや散漫で、どこを一番に見せたいか掴みにくい点が気になります。読者の視線誘導を意識して構図を作るとさらによくなるのでは。
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稲猫ネム さん
(兵庫県)まんが風のコマ割りの中にいろんなシーンを配置し、キョウコの奮闘をコミカルに描いたモノクロ作品がとっても魅力的でした。コマ割り構図を描くのであれば、版面(原稿用紙にある内枠)を意識し、見せたいものはそこからはみ出さないよう意識して描くと効果的です。対するカラーは、背景や小物、洋服の塗りが平面的なのが勿体ない。デッサン等基礎技術はある方と見受けられるので、彩色のスキルアップにもぜひ意識して取り組んでみてください。
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八橙 さん
(兵庫県)PCのデスクトップをうまく背景に取り込んだカラー、雑然としたオフィス風景でキャラの人物像まで描いたモノクロ、どちらも描き手の意図するコンセプトを強く感じるのが素晴らしいです。丁寧に背景や小物が描かれていますが、均一に描き込まれているため見た目が平板に感じられる点が気になります。構図を考える時、少し引き算を意識すると画面が洗練されます。また、モノクロではパースの狂いがやや目立ちますので注意してみてください。
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Lsu さん
(台湾)今回はキョウコをやや気弱な女子風に描く作品が多かったのですが、Lsuさんは強気な雰囲気に解釈しているのが新鮮で目をひきました。佐山の服装がややカジュアル+ジャケットが白であるため、大学や病院が舞台のように見える点が気になります。日本の商社のようなオフィスではまだまだスーツスタイルが主流なので、読者が「お仕事もの」と受け取れるわかりやすさも意識してください。各キャラのポージングに微妙な違和感があるので、デッサンのブラッシュアップも意識するとよいでしょう。
もう一歩の方
朝方朝(群馬県)/桜つむぎ(埼玉県)/匙町(埼玉県)/ないし(東京都)/Airi(長野県)/智聡(福井県)/天田(愛知県)/ODECO(愛知県)/さくら(愛知県)/にいろっけ(愛知県)/綾霧裕己(大阪府)/七草羊(奈良県)/りた(岡山県)/酒瓜(鳥取県)/トラベラー冬木(福岡県)/まる。(福岡県)/るる璃(福岡県)