集英社オレンジ文庫2026年8月刊では、
気になる「あの街」を舞台に綴られた
物語が3作登場!
ちょっとした描写に
ご当地ならではの魅力が散りばめられ、
その街を知っている人は思わずにっこり、
その街を知らない人も
行ってみたくなること請け合いです!
- 著者竹岡葉月
- 装画勝田 文
「でも、ミシンのカフェなんてあるんですね。私は無理ですけど、 需要はあるところにはあるんでしょうね……」
あまりに自分とは縁遠い、まったく知らない世界を見せてもらった気分だった。
「うちは……繊維街の中にあるんで、ハンクラが好きな人が集まりやすい部分はあると思います」
「センイガイ? 日暮里中央通りですよねここ」
「日暮里繊維街でもあります。日暮里中央通りを中心にして、布や手芸用品なんかの店が九十軒以上集まっている問屋街なんです」
「へえ……知らなかったです……」
よく通る道だったが、朝晩の通勤時は店も開いていないし、看板などもあまり注意して見ていなかったのだ。そんなに特徴のあるエリアだったとは思わなかった。
「どうりでお店の数は多いのに、入れるお店が少ないと思った……」
「……一応、ハンクラ民にとっては聖地で……歴史もあるんですよ……」
婚約破棄された真衣が引っ越し先の日暮里で見つけたのは――恋を裁つ「裁縫」でした。ちょっと心に引っかかるキズも、少しうまくいかない日々も、嚙み合わない気持ちも、すべて切ったり貼ったり、縫い合わせたりできたら……。
ままならない人生には、こんな解決策があっても素敵です! 東京下町を舞台に綴る、ほっこり人情譚!
- 著者氏家仮名子
- 装画スー
「この、豆腐のなんとかいう紐みたいなやつはなんだ」
「豆腐干絲だって。干し豆腐ともいうかな。うまいよ」
「こういうの、どこで売ってるんだ? その辺のスーパーには置いてないだろ」
「アメ横に中華食材店があんの。こっからチャリ飛ばして十五分くらい」
「わざわざ上野まで行ってきたのか」
「わざわざって距離じゃないでしょ、そんくらい」
たしかに谷中から上野は近いが、最寄りのコンビニくらいしか出かけていない千秋にとっては「わざわざ」と言っていい距離だった。数十分自転車を漕ぎさえすれば違う土地にだってたどり着けるのだと、男に言われて久しぶりに思い出す。
千秋は豆腐干絲というらしい、ひも状のものを箸でつまみ上げた。
ごま油のいい香りが、鼻を通り抜けていく。
美味しい中華料理、なつかない(けどそこがかわいい)猫、夏の谷中の下町情緒……。食べ物の味がわからなくなってしまった青年・千秋と、日本語と中国語を織り交ぜて話す謎の料理人・小虎。それぞれの事情を抱えたふたりが出会い、中華料理屋の開店めざして奮闘しながら、ゆっくりと心の傷を癒していく口福人情譚。
町中華おなじみの炒飯や餃子に加え、「葱油拌麺」「西紅柿炒鶏蛋」「酸菜白肉」などなど多種多様なガチ中華も登場!食べたことのない料理を想像して楽しむのもよいですが、夜中に読むことはおすすめしません。お腹が空いて眠れなくなってしまうこと必至です!
- 著者櫻井千姫
- 装画かわいちひろ
僕の生家は横須賀の長井地区だ。横須賀といっても市街地ではなく、近くに『ソレイユの丘』という、遊園地とキャンプ場と公園などが一体になった施設がある、のどかな地域。近隣には細かく仕切られた畑が並び、家から五分ほど歩くと漁港に出る。農地と海がミックスされた、令和の今なお昭和の香りが漂う地域なのだ。
父は僕が生まれる前から、そこで『ビューティーオギ』というこぢんまりとした美容院を営んでいた。同じく美容師である母と結婚してオープンさせた、三十年の歴史がある小さな美容院だ。
舞台となるのは、「亡くなった人ともう一度だけ会える」という不思議な力を持った横須賀の美容院『ビューティーオギ』。主人公の美容師・桃治の実家です。
一度は地元と決別し、表参道の一流サロンで働くも、事情が重なり『ビューティーオギ』を父から継ぐことに。横須賀の人びととあたたかい交流を重ねるうちに、自分の生まれ育った町の良さを再発見していき…。
海風を感じる爽やかなシーンが満載で、実在の施設『ソレイユの丘』も登場。
奇跡の再会に涙する、あったか再生物語です…!





