最新選考結果

第80回

応募テーマ
タイトル

『正反対なうちらのありえない友情』

あらすじ

二次元アイドル「Milk Tea」のオタクで、二次元以外興味なしの萌(17)は、池袋でのイベントに向かう途中、狭い路地裏へと迷い込んでしまい、気がつくとそこは――平成の渋谷だった。困っているところを助けてくれたのは絵に描いたようなギャルの美鈴(17)。行くとこないならうちにきなよ、と言われ美鈴の実家に泊まらせてもらうことに。最初は苦手意識を感じていた萌だったが、タイムスリップのことも「ウケる!」と受け入れてくれ、家族や友達への人情にあふれている美鈴に、萌は心をゆるしていく。美鈴のバイト先で一緒に働くことになったり、ギャルに変身させられたり、迷子になった美鈴の弟を探したり――!? 時代を(ちょっと)越えた、ガール・ミーツ・ガール!

今回の講評

第80回イラスト大賞のお題となった作品は、17歳の女の子2人が主人公のダブルヒロインもの。さらに令和→平成というタイムスリップ要素があって、あらすじを読むとヒロイン二人は性格だけでなく時代感も強調されたキャラクター造形になっていることがわかります。萌と美鈴はどちらもヒロインであり、二人の個性を絵として対照的に描けている作品を高く評価しました。また、「平成の渋谷」というキーワードからSHIBUYA109を背景に大きく描いている作品が多かったのですが、お題からすぐ連想できる要素は、他の人も容易に考えつくものです。分かりやすいモチーフで描くのもひとつの考え方ですが、描写をひとひねりする意識もあると、自分らしい表現に繋がります。

入選
キザお★ジュテームさん(埼玉県)

萌と美鈴の表情が抜群に魅力的。カラーとモノクロでまったく異なる表情を描けているのも素晴らしいです。髪型や服装だけでなく、顔立ちの細部で萌と美鈴をきっちり描き分けられているのもGood。カラーは、タイトルが入るスペースや下にオビが巻かれることを意識した構図になっており、文庫カバーイラストとしてよく考えられていることが伝わります。モノクロは、太めの描線でカラーとは異なる印象を演出できているのもよかったです。ストローク感がとても魅力的ですが、線の描き始まり・描き終わりなど細部の処理がやや粗い部分があるので、もう少しだけ丁寧に描くことを意識するとさらに完成度が上がるでしょう。

佳作 あと一息

    和々さん(愛知県)

    「令和オタク女子」と「平成ギャル」の典型的なイメージをしっかり絵に落とし込めているのがお見事。二人の持つ携帯電話がガラケーとスマホ。他にもぬいやつけまなど、小物で時代感を演出できているのもよかったです。モノクロは全身とアップを組み合わせることで躍動感とキャラの内面の両方をうまく伝えられています。トーン使いで光の向きを考えられるとさらに完成度が上がるでしょう。カラーはイラスト作品としては完成度が高いのですが、文庫カバーになった時にやや印象がぼやけそうな色使いが少し気になりました。

佳作

    藤咲れあさん(福島県)

    女の子らしい柔らかさが伝わってくる絵柄にポテンシャルを感じました。ただ、「令和オタク」の萌と「平成ギャル」の美鈴の特徴づけがちょっと弱い点は気になります。特にカバー用であるカラーは、一目で二人の属性が分かるよう描写できるとさらによくなりそうです。

    ツギハギさん(茨城県)

    カラーの色の使い方と、モノクロのトーン処理、いずれも色・線数を増やしすぎていないため、ごちゃつかず、かつしっかりとキャラを区別できる描写になっていました。美鈴に比べて萌の印象が少し弱いので、ダブルヒロイン感をさらに意識できるとよいのではないでしょうか。

    めのなちさん(千葉県)

    構図や色使いに工夫が感じられます。女子高生の可愛さが伝わる絵柄も好印象でした。色や小物、髪型や服装でヒロイン二人を描き分けていますが、プロポーションや顔立ちなど、やや二人が似ている点があります。キャラの描き分けを意識するとさらによくなりそう。

    栃尾さん(東京都)

    カラーのヒロインが二人とも笑顔、しかも違う笑い方なのがいいですね。せっかくのキャラの魅力をもっと見せたいので、背景の余白感は再検討しては。プラモ風のモノクロもユニークです。ただ人物紹介として考えるとややデフォルメが強いので、もうひと工夫してもよいかも。

    まいけさん(東京都)

    カラーは平成文化の象徴ともいえるプリクラを構図に取り込んだアイデアが◎。小物使いがうまく、あれこれ描いていないのにちゃんと平成感、令和感が伝わるのもセンスを感じました。描線にやや勢いまかせなところがあるので、もう少しだけブラッシュアップを。

    もふにさん(東京都)

    カラーもモノクロも、細部への愛を感じる構図でした。小物や背景まで手を抜かず、熱意をもって取り組む姿勢は素晴らしいです。ただ、視点を引いて見た時に、どこを見ればいいか迷ってしまう点はもったいない。次回はぜひ、どこを一番見せたいか意識した絵作りを。

    樫ノふうさん(新潟県)

    個性的な絵柄が一番の武器になっている作品でした。渋谷モチーフに「忠犬ハチ公」を持ってくるアイデアも冴えています。絵柄のせいもありますが、人物の顔がやや似てしまう傾向があります。そこをポーズや表情で描き分けられるとさらにいい作品になりそう。

    稲猫ネムさん(兵庫県)

    カラーでの萌と美鈴の表情が、二人の性格が一目で分かるぐらい解像度の高いものになっていて、解釈の巧みさが感じられました。カラー、モノクロとも背景がそれほど描かれていない点が気になりました。背景や小物も作品を伝える素材として活用してみてはどうでしょうか。

    ミナミさん(兵庫県)

    電話やバッグだけでなく、アクスタや使い捨てカメラ、MDなど、時代感がリアルな小物チョイスがお見事。まんがのコマ割的な構図で複数のシーンを描くモノクロの工夫もよいです。カラーは人物がやや複雑な姿勢なので、もう少し人体デッサンに注意するとよいでしょう。

    硝子金魚さん(香川県)

    爽やかな色使いと、ちょっとメルヘンチックな絵柄がマッチして、女の子の可愛さをうまく表現できています。モノクロは背景などややあっさりしていて、一部がグレーの塗りになっているので、全体をトーンで仕上げるとともに、カラーと完成度を揃えるとよいでしょう。

もう一歩の方々

朝さん(群馬県)/あやさん(東京都)/コノ身さん(東京都)/ないしさん(東京都)/りんこ。さん(東京都)/海夏さん(神奈川県)/noraさん(滋賀県)/あずきあんこさん(大阪府)/かなでさん(福岡県)