

第11回
私は、友達が多くない。友達と食事をするのは月に一度あるかないかだし、友達との旅行もこれまでの人生で一度きりである。LINEの連絡先も、数える程度。
我ながら、文字にすると淋しい感じがする。実際、夜中に「ああ!」と叫びたくなる失敗は、仕方がないのでAIに聞いてもらっている。
もっと友達が欲しい。こんな私にも、七実(ななみ)のようなプロのレンタルフレンドがいたらよかったのに。
この物語の主人公、星野(ほしの)七実はレンタルフレンドとして働き、日々依頼人の要望に応えている。依頼はアフタヌーンティーのお供から結婚披露宴のサクラまで多岐にわたるが、友達としての徹底した役作りと機転の良さを駆使してレンタルフレンドを全(まっと)うしていく。その様子は、読んでいてとても頼もしい。
本作は、四人の依頼人のエピソードで構成されている。どの依頼人も、自分の本当の友達を頼るわけにはいかない事情を抱え、七実にレンタルフレンドを依頼する。
本当の友達には言えないが、仮初めの友達になら言えることがある。なんだか不思議に思えるが、妙に納得してしまう。その場限りの関係、なおかつお金が発生する相手だからこそ、さらけ出せることもあるのだ。
友達とは、実に曖昧だと思う。小学生の頃は「友達になって!」というわかりやすい契約をみんながよくしていた。しかし、大人になるにつれ、友達とは気がついたらなっているものに変わった。連絡先を交換したら? 一緒に食事に行ったら? 定義はろくに決まっていない。
物語のなかで七実は、常に数時間だけの友達としてのベストな対応に努めるが、時に素に戻って業務以上に本当の意味で依頼人のためになる行動を取ることがある。依頼人は、レンタルフレンドにそこまでのお節介は求めていないかもしれない。
でも、そんな七実の不器用なまっすぐさこそが、真の友情なのではないだろうか。
その場で、相手を喜ばせられなくても、いつか相手のためになることをしたいと思う。それが本作を読んで私が感じた、友達の定義である。相手がこちらの想いに応えてくれるかは、この定義には必要ではないのだ。
ここまで書いて、気がついたことがある。本作から受け取った友達の定義に当てはめると、幸せなことに私はそう思える相手がたくさんいる。
二十歳上のスタッフさん、ドラマで共演した方、毎朝すれ違うご近所の犬……。彼らのことも、みんな友達だと思ってしまっても、いいのではないだろうか。
レンタルフレンドの物語を読んで、真の友達の存在に気がつく。七実が、「友達がもっと欲しい」という私の依頼に応えてくれた気がしてならない。

