いぬじゅんのお悩み相談室 いぬもあるけば

今回のお悩み

いぬじゅんさん、こんにちは。僕の悩みを聞いてください。
先日、テレビでなつかしい映画をやっていたので、
「この映画なつかしいね。一緒に観たね」と妻に言ったら、
「え? 私、この映画観てないよ。誰と観たの?」と言われました。
いぬじゅんさん、このピンチを乗り気る方法を教えてください。

(ずーファクトリー)

みなさんこんにちは、いぬじゅんです。
今回もたくさんのお悩みをお送りくださりありがとうございます!
どんなお悩みでもズバッと、時にはゆるっとお答えします。

人の記憶はあいまいです。
私も町で声をかけられ、ファンの人だと勘違いして楽しく話をしていたら、実は町内会長さんだった、ということがあります。
「いぬじゅんってなんのこと? あなた〇〇さんだよね?」と本名を言われた時には頭が真っ白になりました。

恋人や夫婦間で、思い出を勘違いしてしまうと大変です。
笑って見過ごしてくれたとしても、その傷は相手に一生涯残ることでしょう。
大げさではありません。
言ったほうは忘れても、言われたほうはずっと覚えているのです。
のちのちケンカをした時、あなたは相手から傷跡を見せつけられます。
「あの時も勘違いしてたよね。私がどんな気持ちだったかわかる⁉」
「デリカシーがないんだよ。ほらあの時だってそう!」
普段使うことのない『デリカシー』という言葉が出てきた時は要注意。
褒め言葉で遣われているのを聞いたことがありません。
想像するだけで背筋がゾッとしますね……。

今回の相談者様が、どう答えたのかとても気になります。
「いやあ、勘違いだったかな。よく考えたら初めて見る映画だ。あはは……」
こんな答え方をしていたら最悪です。
新たな火種がつき、相談者様の家庭は大炎上したことでしょう。
「昔、友だち何人かと観たんだった」
この答えも、判定はギリギリアウトです。
じとっと湿った目であなたを見た奥様は、「ふーん」とその場からいなくなるでしょう。
よく見てください。その心に傷がついていることを!

奥様が求めているのは「誰と観たか」ということよりも、あなたの誠意なのです。
本当に友だちと観たのだとしても、訂正する時は慎重に、かつやさしく丁寧に。
たとえるなら『誠意のプレゼント』を贈る感じです。

まずは、言葉にきれいなラッピングをしましょう。
「昔、友だち何人かと観たんだった。すごくいい映画でさ。楽しい思い出は、ぜんぶ〇〇(奥様)とのことに書き換えられるんだよなあ」
ラッピングにはリボンもかけましょう。
「でも、勘違いしてごめんね。嫌な気持ちになったよね」
メッセージカードも添えると100点です。
「今度、映画を観に行かない? おいで。なにを観るか一緒に探そうよ」

ただし、この映画が結婚後にほかの女性と観た作品なら話は違ってきます。
女性の勘の鋭さを甘く見てはいけません。
塩味なんです、それもこってり濃厚の!
せっかく包んだプレゼントは一瞬で破壊されることでしょう。