オレンジ文庫

毎月20日ごろ発売

店主オレンジのつぶやき MenuClose

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充分、元は取った。 ――少々いじましいが、会費を払ってパーティに出ている以上、その金額分ぐらいは食べないと。

みる

目がかすむ。 荒々しく脈打つ心臓と、自分の呼吸がうるさい。おかげでそれ以外の音が聞こえない。

みる

八月一日、午前八時三十分。 盛夏を迎え、今日も朝から気温が高い。ミンミンゼミも力いっぱい鳴いている。 その日、雪村大樹はいつものように、起き抜けのシャワーを浴びていた。

みる

金は去り、風も逃げ、水は沈み、陰も消えた。 私がこの指先ひとつで支配していたものたちは、皆私を見捨てて四方へ散り散りとなってしまった。

みる

告別式の会場に入ってきた堀源二郎を見て、有田国政はむせそうになった。

みる

足し算の愛と引き算の愛、どちらが正しいのだろう。いっそ、ゼロを掛けて、すべてなくなってしまえばいいのに――と、彼女は言った。

みる

ごく狭い範囲に点在する高層ビルが天を突き刺す、さいたま新都心。

みる

月面に太陽電池を敷きつめて、地球に電気を送ろうと考える人間がいるこのご時世にランプの話である。

みる

寿町四丁目一番地、通称〈椿屋敷〉――それが私だ。

みる

『佐倉さん、三月二十七日って、なんの日か知ってる?』

みる

「うっそでしょ……」つぶやく声が、誰もいないIT教室にひびく。

みる

――アイとはなんでしょう。わたしにはどうしても其れが判らないのです。これは小説家・御陵(みささぎ)或(あるい)の著作『アイとはなんでしょう』の冒頭の一文だ。

みる

大きな切り株の上に、細めの枝を十本ほど適当に並べ、小振りの鉈で短めにざくざく切っていく。

みる

「なんだか森若さんらしいですねえー」沙名子の向かいの席で、真夕が感心したようにつぶやいている。

みる

キッチンに、初対面の男が立っている。

みる

金曜日の朝が好きだ。なのに……。

みる

学年末テストが何とか終了して、ほっとしながら帰り支度をしていたら、咲楽さん、と呼びかけられた。

みる

栄田直哉の一番最初の記憶は、二歳半の冬。目の前でちろちろと輝く赤い光だった。

みる

ここは、湘南。江ノ電の中でも特に小さな無人駅『幸福ケ森駅』から、歩くこと約十分。なだらかな坂を登ったところに、そのカフェはあった。

みる

チャチャ、チャララー、チャララララララー、チャララチャララチャラララララー。ストーブの上のやかんからシュンシュンと沸く音とユニゾンで、アップテンポのテーマ曲がテレビから流れてくる。

みる

あれからずっと、リチャードの言葉が、体の中を駆け巡っている。血管を流れる血の中に、あいつの声が混じりこんでしまったように。

みる

ほんの数分前まで、今日で人生終わりだなんて思ってなかった。

みる

机の上に置いていたスマホのアラームがバイブ音と共に鳴り響く。

みる

生まれて初めてやってきた東京は、故郷と地続きとは思えないほど、別世界だった。

みる